日本たばこ産業のIT部長 引地久之氏は、DEC、Compaq Computer、HPといった米国大手ITベンダーの日本法人で長年、情報システム部門長を務めてきた異色の人物だ。その横顔に迫る。
ITmediaエグゼクティブの会員に対するインタビュー企画「エグゼクティブ会員の横顔」。第9回は、たばこ、医薬、食品・飲料の製造・販売を中心にグローバルで事業を展開している日本たばこ産業(以下、JT)のIT部長 引地久之氏にお話を伺った。
――現在の業務内容を教えてください。
引地 JTグループ全体のITインフラにおける企画・設計から運用・保守に至る業務を担っています。とくに、グループ全体としてのコンプライアンス(法令遵守)やITガバナンスへの対応が、IT部の最も重要な責務です。したがって、セキュリティ対応やソフトウェアのライセンス管理などについても、IT部が一括して行っています。
――IT活用という観点から注力していることは何ですか。
引地 コンプライアンスやガバナンスへの対応はもちろんですが、ITによってビジネス価値を高めていくことが重要だと考えています。企業がビジネスを推進するうえでITはもはや欠かせない存在となっていますが、それを安定して動かし続け、技術の進歩を的確にとらえ、適正なコストで運用しながら、ビジネスに役立つ使いやすいITの仕組みを提供していくのが、わたしたちの使命です。そうしてビジネス価値を高めることによって、JTグループのお客様にそのメリットを享受していただけるように精進したいと考えています。
――これまでの仕事の歩みについて教えてください。
引地 1980年に日本ディジタルイクイップメント(日本DEC)に入社し、物流を担当したのが、わたしのビジネス人生の始まりです。物流もサプライチェーン・マネジメント(SCM)の一環としてITと密接に関わるのですが、日本DECのようなITベンダーでさえ、当時はまだ、そのインフラ整備がうまくできていない状況でした。
ITについては、日本DECに入社する前に6年間ほど米国の大学で勉強してきたこともあって、しばらくすると情報システム部門への異動を命じられ、SCMをはじめ社内全体のIT化を進める役目を担いました。しかし、当時の情報システム部門には現場指向の意識が薄く、物流現場上がりのわたしの意見が採用されることはあまりありませんでした。
失意の中で情報システム部門から離れ、受注・契約管理や営業サポートを行う業務部門に移って数年間、いわば経営管理の仕事に従事しました。ちょうどそのころ、ITで経営管理を行うERPが注目されるようになってきました。
そんな折、CompaqがERPをグローバルで導入展開するにあたり、日本法人の情報システム部門長をやらないかというお話をいただきました。グローバルでの取り組みというスケールの大きさに魅力を感じたわたしは、1994年にCompaq Computerに移りました。
そこからはまさに急展開でした。ERPの導入が一段落したと思いきや、米国でCompaqがTandem Computers、そしてDECを買収し、さらに今度はCompaqがHewlett-Packard(HP)に買収されるというダイナミックな合併劇が続きました。米国企業の場合、こうした合併に伴うITの統合作業は、ネットワークや機器などを全て置き換えるケースも少なくなく、まさに息つく暇がありませんでした。厳しいこともいろいろありましたが、3度にわたる統合作業の陣頭指揮を執ったことは、わたしの貴重な経験でありキャリアとなっています。
――日本HPに移ってからも情報システム部門長を務めたのですか。
引地 はい。本来ですと、買収された側の人間が部門長に就くことはまずありませんが、HPは当時から社内システムについて米国本社で一括管理していたため、日本法人には情報システムの責任者がいませんでした。しかし、合併となるとCompaqのシステムと統合しなければなりませんから、わたしが新生・日本HPの情報システム担当責任者として統合作業を進めました。さらにその後、グローバルでの組織変更があり、日本だけでなくアジアパシフィック地域全体の情報システムをサポートする責任者も務めるようになりました。
とはいえ、HPでの統合作業が落ち着くと、それまでダイナミックな刺激を受け続けてきたからでしょうか、また新しい刺激が欲しくなってきました。そんな時に、現職のお話をいただき、ITベンダーだけでなく、一度ユーザー企業の立場で情報システムを生かす経験をしてみたいと思い、2008年8月にJTへ移りました。
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明治学院大学 経済学部准教授