「復権」を賭け反転攻勢に出る近鉄百貨店冬の時代が続く百貨店業界(2/3 ページ)

» 2010年08月09日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

2014年に阿倍野本店全面改装、日本最大を目指す

2014年竣工の阿部野橋ターミナルビル タワー館

 梅田、難波に次ぐ大阪第3のターミナル、阿倍野・天王寺でも4年後のオープンに向け、阿倍野本店の建て替え工事を進めている。2014年春竣工の「阿部野橋ターミナルビル タワー館」(仮称)は、地上60階、高さ約300メートルという日本一の超高層複合ビルとなる。近鉄百貨店は、このビルの地下2階から地上14階に10万平米の売り場を構える。ビルと同様、目指すのは日本最大の百貨店だ。

 「大阪には"2011年問題"というのがあり、個々の百貨店の競争もさることながら、ターミナル間のお客様争奪戦も厳しさを増してくる」(岡本氏)

 2011年春、梅田にJR大阪三越伊勢丹が新規出店、大丸梅田店と難波高島屋は増床改装する。さらに翌春には梅田阪急ビル全館の建て替え工事も完了する。こうした新規出店・改装により、大阪市内の百貨店の売り場面積は2005年と比較して50%以上も増えるという。まさに生き残りを賭けた熾烈な競争が予想される。

 さらに百貨店の事業を難しくしているのは他業態の成長だ。小売りは、何も百貨店だけではない。家電量販店やユニクロ、ニトリ、トイザらスといった、いわゆる「カテゴリーキラー」は文字通り百貨店を苦しめている。

 「百貨店はこれまで富裕層に対応してきたため、若年層やファミリー層のお客様を他業態に奪われてしまった。百貨店らしいプレステージ商品も必要だが、お客様の目は低価格商品にも流れており、2極化している」(岡本氏)

 近鉄百貨店では昨年秋、紳士服の価格を見直し、イタリア製生地を使いながら、1万9000円と2万9000円という低価格のオリジナルスーツを投入、計画を上回る売り上げを達成している。同社は従来の百貨店にはなかった同様の低価格商品を婦人服などにも順次拡大中だ。2014年オープンの阿倍野新本店では「百貨店の復権」を賭け、こうした他業態の得意分野にも反転攻勢をかけ、すべての客層を呼び込む「フルライン・フルターゲット」型商業施設を目指すという。

 こうした価格政策商品の開発と並行して近鉄百貨店が進めてきた商品力強化のもうひとつの柱が、本部主導によるマーケティング、商品仕入れだった。

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