ゲームソフトの開発は、普通のソフト開発とは一線を画します。通常は仕様書を書いて、コーディングフェーズがあり、バグをなくすという、言わば、ウォーターフロー型。しかし、ゲームの品質の判断基準というのは「面白いか面白くないか」に尽きます。だから、途中で面白くないと思ったら、戻る作業が必要です。PDCAが早いとも言えます。一般的にいうと、アジャイルに近い。
しかも、プログラムだけではなく、音と映像も大きい要素です。ゲームはコンテンツなので、プロデューサーとディレクターがいて、音と映像とゲームデザインのチームがあって、グラフィックスだけで100人を投入することもあり、そのダイナミズムのまとめ役がディレクターです。はっきりとしたヒエラルキーが出来上がっており、映画製作にも似ているそうです。
合併の経緯は、旧テクモにスクウェアエニックスがTOBを仕掛けたのですが、コーエーとテクモの創業者同士が既知の仲ということもあり、両者の合併が成立しました。テクモは海外売上高が大きいが、コーエーは国内比率が高い。コーエーにとっては、欧米向けのつくり方を学べる機会になります。一方、コーエーはコストやスケジュールの管理が優れているのでテクモに学習効果が生まれ、よい補完関係にあるようです。
他のソフトウェアよりも格段にスケールメリットがある業界でもあります。グラフィックスは、ひとつのタイトルで1000人月というものがある。それも、100×10カ月ではなく、500×2、3カ月というものです。外注するものの、人件費を標準化して有効活用できる。技術の進歩が早いのもこの業界の特徴。スケールを抱えることはそのままラーニングカーブにつながります。
ゲーム業界ほど行方の分からない業界はありません。それは、どんなゲームが「当たる」か想像がつかないという一般論からも言えることなのですが、わたしは、任天堂がWiiを出したときに、頭が混乱してしまいました。プレイステーションとXbox360がハイエンド市場で凌ぎを削っていたときに、Wiiは突然、ゲーム業界にカジュアルな概念を取り入れました。家族で遊ぶゲーム、初心者でも楽しめるゲーム、そこで求められたのは表現技術よりもユーザーインタフェースでした。しかし、わたしは、みんながその成功を賞賛しているのを横目で見ながら疑問を禁じ得ませんでした。
家族に代表されるような新しいゲームユーザーは、ゲームに思い入れがあるのだろうか?
それ以来、デバイスもインタフェースも多様化しています。しかし、ハイエンドは相変らず顕在ですが、新しいマジョリティーであるカジュアルなゲームのユーザーも顕在です。ゲーム会社はどこに向かえばいいのでしょうか?
松原さんは、PCやゲーム機だけでなく、スマートフォンのゲーム業界への参入により、市場はさらに混沌としてきたと指摘します。しかし、市場変化があることを十分理解しながらも、コーエーテクモとしては、ゲーマーというユーザーを大切にしていく方針であることに変りはないそうです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授