あなたの会社でも、このような声が挙がっていませんか。「うちの会社にはビジョンがない」「上司のマネジメント力が低い」「エンジニアはコミュニケーション力が低い」。これらの声は、リレーションシップ・クライシスに陥っている会社でしばしば聞かれるものです。
業績にかげりが見え始めたのは1年前。これまで順調に成長してきた事業だが、先行きが怪しくなってきた。
この数カ月間、各部署の責任者を集め打開策を検討するが、お互いの主張が全くかみ合わず、議論は一向に進まない。「みんな“ああだ、こうだ”と言っているが、結局はやるかやらないかの話だろう! はっきり言って、責任逃れをしているようにしか聞こえない」と、いくら議論を重ねても一歩も前に進まない状況に、社長のイライラは募るばかり。
やがて経営陣の間には埋めがたい溝ができていき、組織は中核からバラバラになっていく。そして、それに呼応するように職場の士気はどんどんさがり、優秀な社員の退職、メンタルヘルスの問題などが次々と起こってくる。
「一体、何が原因なんだ。出口が全く見えない」
このような状況に、覚えがある方も多いのではないでしょうか。
わたしはこれまでに、組織変革や事業転換などの多くのプロジェクトにファシリテーターとしてかかわった中で、今、日本企業はある共通した問題に直面していることに気づきました。
それは「はじめは単なる意見の食い違いだったものが、状況が深刻になるにつれて、根深い感情的な対立にまで発展し、その結果、組織が崩壊状態になる」というパターンです。
このような関係性の問題が、事業上の危機にまで発展していく現象を、わたしたちはリレーションシップ・クライシスと呼んでいます。
リレーションシップ・クライシスは、複雑に絡み合い将来を見通すことができない環境の中で、マーケットそのものが縮小していくという、いまだかつて誰も経験したことのない状況に直面したことが引き金となって多くの組織で起こっている社会的な現象なのです。
今、あなたの会社でも、このような声が挙がっていませんか。
これらの声は、リレーションシップ・クライシスに陥っている会社でしばしば聞かれるものです。通常、対策として研修や組織編制の変更などが行われますが、多くの場合、状況は改善されず組織は迷走し続けるという結果に終わります。
なぜでしょうか。それは、リレーションシップ・クライシスは構造的な原因によって引き起こされている問題だからです。先ほどあげた症状は、あくまでも問題の枝葉であり、本質ではありません。
このことに気付かず、枝葉に手を打ち続けることが、冒頭の「何が起こっているのかわからない。出口がみえない」という悲痛な叫びへとつながっているのです。
しかし、リレーションシップ・クライシスは、きちんとその実態さえつかむことができれば、決して簡単ではありませんが、解決可能な問題です。
そして、非常に大切な点は、このリレーションシップ・クライシスは企業が新たな現実を創造しようとする際に起こる葛藤であり、その先には事業自体が劇的な変貌を遂げる可能性を秘めているということです。
当コラムでは、このリレーションシップ・クライシスがどのような構造によって引き起こされているのか、また、どのように扱っていけばよいのかということについてお話したいと思います。
全3回のコラムを通じて、読者の皆様の職場で起きていることを構造的に把握し、解決の糸口が見えるようにサポートさせていただきます。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授