通信インフラはどうか。これは、驚かれる方も多いかもしれないが、ここバングラデシュにおいて、データ通信カードのおかげで、わたしはネット環境で困ることはなかった。また、バングラデシュの通信事業者bracNetが無線通信技術WiMAXを提供しており、極めて良好なネット環境が整備されている。
ただし、言い換えれば、通信インフラだけが先行している状態である。情報技術や情報インフラといった部分のすべてが整っている状況にはない。
バングラデシュ政権は、情報通信技術(ICT)の活用を促進することを目的として「デジタル・バングラデシュ」をスローガンに掲げており、2021年までに行政サービスやビジネス活動にICT を導入し、事務手続きの負担軽減や効率化、IT人材育成を進め、ICT業界を繊維業界に次ぐ産業とすべく取り組んでいる。つまり、通信インフラは一歩先に整備されているわけだが、それを有効に活用したサービスやビジネス活動とはなっておらず、社会インフラとして十分に活用されるレベルには至っていない。
このバングラデシュのICT領域は、日本のIT企業にとって興味深いのではないだろうか。わたしの知る限り、日本の電子政府事業や行政サービスの電子化などは、実現可能な技術的範囲に比べ、極めて限られた範囲にとどまっている。これは、日本の政治的な判断や各省庁の縦割りの取り組み、あるいは既存システムや既存インフラからの段階的移行などの制約によるところが大きいと思われるが、実現可能な技術を十分に活用した先進的なサービスをバングラデシュで展開できる可能性がある。
前述のとおり、バングラデシュ政権は「デジタル・バングラデシュ」というスローガンを掲げ、繊維産業に次ぐ産業としてICT産業の成長に取り組んでいる。既にソフトウェア開発企業が国内約550社、外資系30社以上に達している。また、同国では60校近くあるIT関連大学から年間約5000〜6000 人のIT 人材が輩出されているというのも見逃せない。このような観点からも、バングラデシュにおける情報インフラ整備の動きは、日本のIT企業にとって、大きな可能性を秘めているのではないだろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授