今年も残すところわずかになった。せわしなく過ごしている人も多いだろう。ところで、部下が失敗してお客様や周りの人間に大変な迷惑をかけたようなときに、ひどく叱責したことはないだろうか。今回はそのことについてお話ししたい。
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<事例>
あるメーカーのG課長は、先日部下のX君のことを、みんなの前でひどく叱責した。X君がクライアントHさんへの商品の発送を忘れ、そのことに対して、クライアントのHさんからクレームの電話が掛かってきた。
「約束をすっぽかすなんてGさんはX君をどう教育しているのですか?」
クライアントはかなり立腹気味だった。G課長はX君を呼び出して、周囲の人間にも聞こえるような大きな声で問いただした。
「昨日クライアントのHさんのところに商品を送るのをどうして忘れたんだ! 大切なお客さんなのに」
「朝は覚えていたんです。ただ午前中に急きょ提案書を作らないといけなくなり、すっかり忘れてしまいました」
「前にも同じようなことがあったよな。十分気をつけるように言ったのにどうしてなんだ。気をつけろ」
「申し訳ございません」
X君はしゅんと押し黙ってしまった。G課長はどなったものの、怒りはまったく収まらなかった。
周囲の人が見ている中で、激しく叱責されたX君はどのような思いだろうか。おそらくG課長のことを恐れるようになるとともに、失敗に対して過度に敏感になるだろう。最悪の場合、ひきこもりになるかもしれない。
一方で、X君を叱責したG課長はどうだろうか。大きな声でどなり、気分が晴れたかというと、全然そういうことはない。なおも怒りが収まらず、いやな気持をずっと引きずった状態である。
失敗に対して過度に叱責することは、叱責した人にもされた人にも、何も良いことが残らないのである。
「失敗」の本質がどこにあるのかを突き止める必要がある。例えば、X君の場合、提案書を急きょ作らなければならず、それに没頭したために、忘れてしまった。もし別の案件で急な仕事が入ってきた場合、X君が同じような失敗をする可能性がある。叱責で終わるのではなく、そのような事態にならないよう、対策を講じていかなければいけない。失敗を繰り返すことが一番良くないのである。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授