なお、わたしは「叱る」ことに反対しているわけではない。失敗したときには、しっかりと過ちを認識させるために「叱る」ことは必要である。失敗しても「大丈夫、大丈夫」と言っていたら、ただの仲良しクラブになり、同じ失敗を繰り返すだけである。ただし、「叱る」際に上司として気をつけてほしいことがある。
次の4つである。
まずは何よりも冷静になることである。叱られることを快く思う人はいない。激しく興奮して叱ったら相手はさらに嫌な気分になるし、聞く耳を持たなくなる。冷静に、落ち着いて話をすることである。
次に、ニュートラルの姿勢も大事である。ニュートラルではなく、誰かと比較して「同期の○○君はできているのに」などとは決して言ってはいけない。
そして、叱る際には行動に焦点を当てることである。「君が言ったことでこのような事態が起こった」ではなく、「君の行動によって迷惑を被った人がいる」と言うのである。
そして、最後にとても大切なのが、失敗は上司自らが責任をとるということを、明確に伝えることである。
失敗したら、どうしてくれるんだと怒鳴り、それを評価に結び付けようとする人がいる。評価をして、決めつけたら、成長はそこで止まってしまう。評価されると思うと、人は臆病になり、そのような人材が集まった組織は冒険しない組織になる。そして、メンタル面でもフィジカル面でもおかしくなってくる。
「失敗は自分が責任をとるから頑張ってごらん」
それくらいの度量を持って、部下と接してほしい。
なお、最後にお話ししたいのは、当たり前ではあるが、何かミスをしたときにそれが大きな問題になる前に対処しなければならないということである。部下が上司になかなか言い出せずに問題がさらに大きくなったという話を耳にする。
日々部下とよく話し、話しやすい環境を整えてあれば、何かミスをしても部下はすぐに上司に話しやすく、問題も大きくなる前に対処できるはずである。日々の部下とのコミュニケーションがとても大切だということを肝に銘じてほしい。
「失敗は成功の母」と発明家のエジソンは言った。失敗から学び、そこからどう成長させるか。上司も試されているのである。
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。「ビジネスマンの悩み相談室」は電子書籍でも配信中。「自分は頑張っていると主張する部下に悩む上司」「ぬるい部下に悩む上司」「若い人には横から目線で共感する」(各250円)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授