部下の営業成績がなかなか上がらない。なぜか。わたしは営業リーダーには、求められる資質があると考えている。今回はそのことについてお話ししたい。
部下の営業成績がなかなか上がらない。そんなため息まじりの嘆きの声を耳にすることが多い。なぜ営業成績を上げられないのか。わたしは営業リーダーには、求められる資質があると考えている。今回はそのことについてお話ししたい。
ITメーカーのM氏は、社長賞なども何度か受賞するなど、やり手の営業担当者として社内で名を馳せていた。その手腕を買われたM氏は、38歳という若さで営業部の部長に抜擢された。彼はやる気に満ちていた。
ある日営業成績の上がらないO君がM部長のところに相談にきた。
「○○社に行ったのですが、来期の発注はしないと言われてしまいました。あきらめるしかなさそうです」
M部長は言った。
「1度言われたくらいで引き下がってはいけないよ。わたしが君くらいのころには何度も通いつめて受注につなげたものだよ。足しげく通って、是が非でも来期の受注をとってきなさい」
O君はどうしていいか分からず、頭を抱えてしまった。
M部長は決定的なミスを犯した。それは受注が取れずに悩んでいる部下の相談には乗らず、「努力が足りない」「結果を出せ」とだけ伝えたことである。
営業リーダーが部下に対して「結果を出せ」ということは良くある。そのように叱咤激励することが何よりも大事だと考えているからだ。
しかし、実際に営業成績が良くない人は、結果を出したいのだがどうしていいのか分からずにいる人たちである。そのような人たちにただ「結果を出せ」と言い続けても、何の解決にもつながらない。
「結果を出せ」という前に営業リーダーがすべきこと。それは、「関係の質」を高めることである。
営業部でも現在はチームで動くことが当たり前になっているが、そこにはバッドサイクルとグッドサイクルというものがある。以前にも紹介したが、営業チームではとても大切になるので、再度簡単にお話ししたい。
バッドサイクルは、なかなか成果の上がらない組織が陥りやすいものである。そのような組織は、何よりも最初に結果を求める。つまり、「結果の質」を向上させようとするのだ。しかし、結果がでなければ、対立や押し付け、命令が横行するようになり、組織のメンバー間の「関係の質」が低下してしまう。
すると、受け身になってしまったり、仕事がつまらないと感じてしまうなど「思考の質」が低下してしまい、メンバーは考えることをやめてしまう。そして、「行動の質」が低下し、自発的、積極的に行動しなくなってしまい、結果として、「結果の質」がさらに低下していく。このサイクルにはまってしまうと、何よりも求めていたはずの「結果の質」はどんどん下がっていくことになる。
一方で、グッドサイクルは「関係の質」を高めるところから始める。「関係の質」を高めるとは、相互理解を深め、互いを尊重し、一緒に考えることである。ここから始めると、メンバーは自分で気づき、面白いと感じるようになり、「思考の質」が向上する。面白いと感じるので、自分で考え、自発的に行動するようになり、「行動の質」も上がる。その結果として「結果の質」が向上し、成果が得られ、信頼関係が高まり、「関係の質」がさらに向上する。
「関係の質」の大切さを理解せずに、「結果の質」だけを求めていると、部下との信頼関係を築けず、どんなに努力しても結果を出せないという状況になる。
一見、遠回りをしているように感じるかもしれないが、何よりもまずメンバーとの人間関係の質を高めることが、成果を持続的に出していくための近道である。
M部長の場合、「結果を出せ」という前に、相談にきたO君に、「受注が取れないのは何が問題だと思いますか?」「どうしたら来期の受注を取れると思いますか?」と質問しながら話し合う必要があったのである。
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明治学院大学 経済学部准教授