「クオリティ ガバナンスセミナー2010」(後援:ITmedia エグゼクティブ編集部)の特別講演で、作家の岩崎夏海氏は、自著「もし高校野球の女子マネージャー がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の大ヒットの背景を語った。
「刷り部数で181万部を超え、このままいくと2010年で最も売れた本になるようです」
作家、岩崎夏海氏は自著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』についてそんなふうに話す。同書は「もしドラ」という略称が作られるほどブームを呼んでいる大ベストセラー小説。野球部マネージャーを務める女子高生が主人公で、経営評論家P.F.ドラッカーの著書『マネジメント』エッセンシャル版と出会い、その内容を参考にしながら、甲子園を目指すというもの。小説の中で、主人公は『マネジメント』にならって、組織、つまり自分がマネージャーを務めるチームの定義付けから始めるといった具合だ。
しかし、岩崎氏は「もしドラ」の売れ行きについては、まるで人ごとのように話を続ける。
「『もしドラ』が人気を呼び、ドラッカーさんの著作の売れ行きもアップしているようで、とてもうれしい。ただ、わたしは自分がドラッカーブームをつくったとは思えない。読者の皆さんがドラッカーを欲していたのだと思います」
ドラッカーの『マネジメント』は1973年に発表された。ドラッカーはその時代から日本でも有名な経営評論家だったし、大きな影響力を持っていた。しかし、彼の名前がここまで多くの人の口にされることはなかったのではないか。岩崎氏の「皆さんがドラッカーを欲していた」という発言にはどういう意味が隠されているのだろう。
それは、どうやら今日本が直面している大きな変化の時代と関係があるようだ。岩崎氏は次のように続ける。
「ここにきてガバナンス、つまり統治というものが変質してきているように思えてならない。上位下達という形のガバナンスが通用しなくなっていて新しいガバナンスの手法が求められている。多くの人がドラッカーを欲しているという背景には、あらゆる集団、組織で統治するシステムに問題が生じてきており、それを今の時代に合ったものに変えるマネジメントの力が求められているのではないか」
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明治学院大学 経済学部准教授