人間生まれてきたからには一事を成せ『坂の上の雲から学ぶ』ビジネスの要諦(2/3 ページ)

» 2011年01月18日 08時30分 公開
[古川裕倫,ITmedia]

自分にとって何が一事であるか

 本連載を読んで、わたしが結果論だけを書いているのではないかと疑問を持つ読者がいるかもしれない。確かに、ここに紹介した人物のすべてが必ずしも最初から一事を成そうと意識していたかどうか定かではない。もう一つ。「自分にとってこれが一事である」と最初から気付いていたかどうかは分からない。つまり、自分の一事が何であるのかを発見するのが難しい。

 この登場人物のように一事を成したいとは思うものの、自分にとって何が一事であるのか、それが分からない。そういう疑問を持つかもしれない。実は、わたしも『坂の上の雲』を読んで、生涯で一事を成したいとは思うようになったのだが、何が自分の一事であるかよくは分かっていない。

 竜馬にしても、若い頃は学問には興味がなく、剣術に夢中であった。そんなときに、大政奉還を一事にしようとなど夢にも思っていなかったはずである。

 勝海舟に出会い、外圧や西洋のことを学び、各藩の事情を知って、日本のことを考え始めたのである。そして、日本が列強の餌食になってはいけない、どうすれば独立を守れるかを考えるようになったのだ。

 好古も真之も、最初から陸軍や海軍で自分が成すべきことを知っていたわけではない。与えられた環境と現実があっただけだ。その中で、自分がすべきことを前向きに考え、それが、結果として一事につながったのだろう。

 

一事を探す旅も楽しい

 一事を成すには、まず一事を探さなければならない。だれしもいろいろなことが気になり、周りにたくさんのものが見えると、どれが自分の取り組むべきものであるのか、時に分からなくなってしまう。

 昨年ある人から送られた年賀状に素晴らしい言葉があった。

「虎穴に入らずんば虎児を得ず」

「では、虎穴はどこにある?」

「虎穴は、自分の足元にある!」

 これが答えではないだろうか。自分のたまたま選んだ道であるとか、与えられた環境の中に自分の成すべきことがある。

 会社に積極的に貢献することもいい。部下を育て上げることも一事であろう。もし、嫌々会社に行って、部下の面倒もみたくないのでは、そこには一事はない。

 もう1つ言いたいのは、自分の成すべきことを探すのも大きな楽しみであるということだ。だれしも最初から自分の一事が見えているわけではなく、それを探す旅こそが楽しいのではないか。

 「一事を成したい」「自分の一事は何か」と思っていると、毎日が充実したものになるとわたしは思うが、いかがであろうか。

 定かではないが、わたしにとっては「先輩・先人の教えを後世に順送りすること」が、自分の一事に思えてきていて、毎日が楽しい。もちろん、どれだけできているかは別の話だが。

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