SEのコミュニケーション能力向上がITを「武器」に変える〜その3エグゼクティブのための人財育成塾(1/3 ページ)

「論理思考力の強化」、これは近年多くの企業が社員のベーシックスキル育成テーマとして取り上げている。SEの育成においても、当然のことながら例外ではない。しかしながら、「論理思考力」を駆使して考えてコミュニケーションをとっても、実際にはうまく行かないケースがよくあるのも現実である。そこには、何が欠けているのだろうか?今回は、相手の「納得」を得るためのコミュニケーション手法の考え方に関して解説する。

» 2011年04月07日 07時00分 公開
[井上浩二(シンスター),ITmedia]

 「うちの上司はちっとも論理的じゃない」、「どんなに分かりやすく説明してあげても、ちっとも理解しない」、自分が論理的に説明していると"思い込んでいる"人がこのような事を言うのを耳にする事がある。特に、「論理思考研修」を受けて、その考え方を使ってもうまくコミュニケーションを取れなかった人が口にする事が多いように思う。果たして、コミュニケーションは本当に論理的だったのであろうか?このシリーズの第1回目にも書いたが、論理的かどうかは「相手が決める」のである。自分がどんなに論理的だと思って理論を積み上げても、相手にとって論理的でなければ意味がないのである。では、相手にとって論理的となるように自分の考えを伝えるにはどうすればよいのだろうか?

 論理思考研修では、自身の論理を構築・検証するツールとしてピラミッドストラクチャー(PS)を必ず教える。(図1参照)その基本的な考え方は、以下の通りである。

 1、イシューを特定する:テーマが何か、聞き手が何を期待しているか、そこに対して自分が何を言いたいかを明確にする。

 2、論理の枠組みを考える:自分の主張を伝えるために、何を言えば相手が理解してくれるかを考える。

 3、論拠を整理する:各枠組みで主張したい事をサポートする論拠、事実を整理する。

 4、メッセージを引き出す:論拠、各枠組みのメッセージから自分の伝えたい事を端的にまとめる。

 5、論理の整合性を確認する:自分の主張が聞き手にとっても論理的に成立するかをチェックする。

図1

 PSの肝は、自分の論理のチェックである。自分が伝えたい事が今議論しなければならない事、聞き手が聞きたい事とずれていないか。自分の伝えたい事は、相手にとって分かりやすい論理の組み立てになっているか。論拠は、本当に正しいか、聞き手に理解されやすいものになっているか。どのようなコミュニケーションを取る場合でも、このようなチェックを行う必要がある。提案や何らかの報告などの公式のプレゼンテーションを行う場合には、PSをチームで共有して議論し、全員でチェックしながら資料の作成・話す内容の整理をすべきである。

 日常的な議論の場では、簡単な走り書きのメモで構わないのでPSを書き、自分の論理をチェックすべきである。このチェックを行うだけで、自分の考えをかなり論理的に相手に伝える事ができるようになる。しかしながら、このような論理チェックを行って伝えても、思ったように聞き手に自分の伝えたい事が伝わらないケースが発生する。何故だろうか?これは、どのようなビジネスマンにも当てはまる事なのだが、今回はテーマが"SEのコミュニケーションスキル向上"なので、SEが開発時に他のメンバーを指導するシーンを例にとって解説する。

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