習い性のその新製品開発会議が、儀式に過ぎないことに気付け!生き残れない経営(1/2 ページ)

担当部門がバラバラに新製品開発を行っていることはないか。開発企画から戦略を立てきちんと手順を踏む必要がある。当たり前だが、あなたの会社は大丈夫か。

» 2011年05月16日 07時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 A家電品メーカーの新製品開発会議席上での出来事。

 営業部長「この掃除機の“吸い口”が他社に比べて安っぽく感じるので、他社並みに重厚タイプに変えて下さい」

 事業所長「何台売上げアップしてくれますか、成型の型代を投資しなければなりません」

 販社社長「何を言ってるか! 営業がやれと言ったら営業の言うとおりにやるんだよ。 何台売ってくれればやる、売ってくれなければやらない。だからダメなんだ」

 B情報機器中堅メーカーのR&D会議席上での出来事。

 社長「この売価はいくらを予想しているのか。原価はいくらか」

 開発部長「今のところ売価は1,000円を要求されています……」(歯切れが悪い)

 社長「原価は?」

 開発部長「……今のところ、……最大2,000円くらいです」(歯切れが悪い)

 社長「全然話にならないではないか。値上げ要求をしてはどうか。原価低減計画はどうなっているのか」

 開発担当役員「今、値上げの要求中です。もう少しお待ち下さい」

 A、B社ともに、日頃の新製品開発体制の問題点が端的に現れたやり取りの場面である。

 A社は、事業部主催の大規模な新製品開発会議を半年に1回開催する。事業部/研究所/設計・製造部門を持つ事業所の幹部/販売側は販社社長以下経営幹部・支店長・営業幹部が勢ぞろいする。販社社長は事業部企業の副社長も兼務するから、製造側に対しても絶対的権限を持つ。従って、上記のようにマーケティングを履き違えた販社社長が、理不尽なやり取りで事業所長をどう喝することができるわけだ。事業所長も販社社長もどっちもどっちだが、経営幹部がメーカーと販社を兼務し、新製品開発やマーケッティングの手法を理解していないと、こういう不幸なことが起こる組織上の問題を抱える。

 もう一つの問題は、開発会議の議論の中心をなす新製品開発計画書は、設計部門が中心となって事業部の製品担当部門と事前に協議をする形で作成され提案されるが、いわゆるマーケティングやイノベーションが充分反映されているかどうかである。設計と事業部担当部門の裁量に任されているから、そこに優れた企画者がいれば、例えば試作品を量販店などに事前に持ち込んで意見聴取を行なったり、顧客・営業の意見やクレームを反映したりして内容のある開発計画書となっているが、そうでなければ(そうでない場合が多い)議論するに値しない貧弱な開発計画書になる。開発計画書の出来不出来は、当然製品の先々の市場占有率や事業収益に大きく影響する。

 さらに問題は、開発会議の進め方だ。会議は、事業部長、研究所長、販社経営陣のご意見を伺う場である。彼らが新製品開発手法やマーケティング手法を勉強して身に付けている風でもないし、顧客要望を特別把握しているわけでもなさそうだから、彼らの古い経験と常識論だけで進められる。いかにも議論されているようだが、開発計画書提案者たちの関心は、議論の中身より、会議を無難に終えたかどうかである。そもそも彼らは最初から、旧態依然の思考に捉われた経営幹部意見に期待していない。およそ、新製品開発会議と銘打つのもおこがましい内容の会議が、仰々しく年2回開催されるわけだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆