あなたは自身のミッションを持っているか。ミッションがないと、何のために仕事をしているのかが見えなくなる。そして、頑張っても何も見返りがない、自分が得るものは何もないと感じると頑張らなくなってしまう。
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前回ぬるい社員についてお話ししたが、ぬるい社員はなぜできるのだろうか。今回はそのことについて話したい。
<事例>
ある損害保険会社のC支店長は数字の目標を達成することをとても重視している。毎月初めに行われる支店の定例会議で次のような発言をした。
「今月は本社から○○人の新規顧客を獲得し、○○円の売り上げを達成するようにという目標が来ている。ぜひ頑張ってほしい。ついては、今月それぞれが新規顧客を何人獲得したらいいのか、売り上げをどれくらいあげてほしいのか、目標を渡すので、これを念頭に置いて仕事をしてほしい」
1カ月後の定例会議。目標を掲げたものの、半数以上の人がそれを達成できなかった。
「先月新規顧客○○人の獲得、○○円の売り上げを目指したが、報告を見ると、半分以上の人が達成できていないようだ。それぞれに数字の目標を渡したのにどうしてなんだ」
C支店長は怒鳴り散らした。部下のZさんがC支店長に質問した。
「支店長、新規顧客を獲得する目標を達成しないといけないということは分かるのですが、それはなぜでしょうか?」
「本社が言ってきている数字だからだ。達成しないと、支店としての評価が下がるではないか」
「でも…」
「とやかく言わずに、君たちは目標を達成することに専念してほしい!」
Zさんは押し黙ってしまった。
なぜぬるい社員が生まれるのだろうか。「ミッションがあるかないか」ということが大きく影響していると、わたしは考えている。ミッションがないと、何のために仕事をしているのかが見えなくなる。そして、頑張っても何も見返りがない、自分が得るものは何もないと感じると、ぬるい社員が生まれてしまうのである。
3月11日に東日本大震災が発生したが、警察官や自衛隊員、消防隊員の方々の頑張りを見るにつけて、このミッションの大切さを痛感する。彼らはとても高いミッションを持ちながら、仕事に取り組んでいる。もちろん大変な苦労はあるだろうが、充実した日々を送っているのではないかと思う。ミッションをしっかりと認識し、やるべきことを遂行しているので、仕事への誇りも高いはずである。ビジネスにおいても、彼らのようにミッションを明確にすることが大切ではないだろうか。
C支店長の場合、本社からの数字を達成させることが最も大切ではあるが、なぜそれが必要なのかという部下からの問いに、「本社から言われたからだ」とだけ答えている。どんなミッションがあって、この数字が来ているのか、それを説明できていない。もし本社がその目標数字が掲げた理由が知らされているのであれば、それを部下に話すべきである。もしくはC支店長なりに理解しているミッションを伝えてもいいだろう(ただし、C支店長にミッションがないかもしれないが)。
単に本社から言われたからだと伝えていては、部下はついてこないし、やる気が起きず、モチベーションも下がってしまう。まして目標を達成できなくてとがめたら、余計にやる気をなくしてしまう。
ミッションがないから、不平不満が出るし、場合によっては身体が不調をきたすことも起きる。毎日が充実しないし、何か起きても周りの人のせいにする。そして、自分が頑張っても意味がないと感じ、それならば適当に自分のできる範囲の仕事だけをやっておこう、それでいい、そんなぬるい社員になるのである。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授