脳のように記憶もすれば忘れもする「シナプス素子」開発

必要な情報を記憶するが、いらない情報は忘れるという人間の脳の神経活動の特徴を自律的に再現する「シナプス素子」の開発に物質・材料研究機構のグループが成功。

» 2011年06月28日 11時51分 公開
[ITmedia]
photo ニュースリリースより。「1」の画像と「2」の画像をそれぞれ10回、異なる感覚で入力すると、「1」の画像が記憶され、「2」の画像は忘却されていく

 必要な情報を記憶し、いらない情報は忘れるという人間の脳の神経活動の特徴を自律的に再現する「シナプス素子」の開発に世界で初めて成功したと、独立行政法人の物質・材料研究機構が発表した。脳型コンピュータや人工知能の開発に大きく寄与するとしている。

 人の脳は、情報の入力頻度が高いほど確実に記憶し、低いとあいまいな記憶になり、忘却していく。この仕組みは神経細胞が別の神経細胞に信号を伝える「シナプス」の結合の強さの変化によって実現していると考えられている。

 物質・材料研究機構の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の大野武雄 博士研究員、長谷川剛 主任研究者、青野正和 拠点長らの研究グループは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジムゼウスキー教授と共同で、電気信号の入力頻度によって自らの結合強度を調節するシナプス素子を開発した。金属電極とイオン・電子混合伝導体電極で構成し、イオンの働きを利用することで信号入力の頻度に応じて結合強度を制御することに成功。実際のシナプスの結合強度の変化とよく一致しているという。

 人間の大脳には数百億の神経細胞(ニューロン)があり、それぞれ平均数万個のシナプスを持っている。従来の人工シナプスはあらかじめ設計した通りの動作しかできないが、開発したシナプス素子は自律的な記憶・忘却が可能で、「まるで人間のように経験によって賢くなる人工知能の構築に大きく寄与する」としている。

 成果は英科学雑誌「Nature Materials」(オンライン速報版)で公開した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆