必要な情報を記憶するが、いらない情報は忘れるという人間の脳の神経活動の特徴を自律的に再現する「シナプス素子」の開発に物質・材料研究機構のグループが成功。
必要な情報を記憶し、いらない情報は忘れるという人間の脳の神経活動の特徴を自律的に再現する「シナプス素子」の開発に世界で初めて成功したと、独立行政法人の物質・材料研究機構が発表した。脳型コンピュータや人工知能の開発に大きく寄与するとしている。
人の脳は、情報の入力頻度が高いほど確実に記憶し、低いとあいまいな記憶になり、忘却していく。この仕組みは神経細胞が別の神経細胞に信号を伝える「シナプス」の結合の強さの変化によって実現していると考えられている。
物質・材料研究機構の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の大野武雄 博士研究員、長谷川剛 主任研究者、青野正和 拠点長らの研究グループは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジムゼウスキー教授と共同で、電気信号の入力頻度によって自らの結合強度を調節するシナプス素子を開発した。金属電極とイオン・電子混合伝導体電極で構成し、イオンの働きを利用することで信号入力の頻度に応じて結合強度を制御することに成功。実際のシナプスの結合強度の変化とよく一致しているという。
人間の大脳には数百億の神経細胞(ニューロン)があり、それぞれ平均数万個のシナプスを持っている。従来の人工シナプスはあらかじめ設計した通りの動作しかできないが、開発したシナプス素子は自律的な記憶・忘却が可能で、「まるで人間のように経験によって賢くなる人工知能の構築に大きく寄与する」としている。
成果は英科学雑誌「Nature Materials」(オンライン速報版)で公開した。
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