現場ということで海外の話をしましたが、お客さまのところへ社長自身が出向くことも当然必要です。社員からの報告を聞くだけで、現場(お客さまの実態)を理解した気になるのは、とんでもない間違いです。
どんな会社でも、「嫌な話は社長の耳に入れないでおこう」と思うのがまともな社員です。「こんな話をしたら、社長は怒るかもしれない」という出来事を、誰が進んで報告するでしょうか。隠そうとするのが当たり前です。「社員は嫌な報告をしたがらない」ということを忘れてはいけません。だからこそ、社長自身がお客さまのところへ出向き、積極的に嫌な話を聞いてくるしかないのです。
現場へ行けば、嫌な話がどんどん耳に入ってきます。相手はお客さまですから、社長だろうが、誰だろうが気を遣うはずはありません。気になっていること、不満に感じていることを遠慮なくぶつけてくるでしょう。そんな話を聞いていれば、「ここは改善しなければならない」「あそこは変えるべきだ」というポイントが次々に浮かんできます。
言ってみれば、変えざるを得ない状況に追い込まれるのです。そうやってわたしも現場の状況を知り、何度となく会社や自分を変えてきた。そんなわたしを見て「小山社長は変化が好きなんですね」と言った人がいますが、とんでもない。わたしはもちろん、どんな人でも、変化を好んだりはしません。
個人だって、組織だって「できることなら変わりたくない」が本音です。変化するのは大変で、変わらないのは楽ですから「どっちがいい? 」と聞かれれば、迷わず「変わらないほう」を選びます。当たり前のことです。しかし、それでは会社がダメになる。お客さまとライバルが変化したら、それに対抗していかなければ、いずれは倒産して会社がなくなります。だから、わたしは仕方なく変わろうとする。
世間に出回っているビジネス書には「変化を嫌ってはいけない」と書いてありますが、そんなことは無理です。誰だって変化は嫌いなのです。ついでに言えば、武蔵野の業績が良いのは、わたしが新宿・歌舞伎町で毎晩飲んだくれていたいからでした。それ以上に理由などありません。そもそも働く動機がわたしは不純です。
動機はいくら不純でも、結果が清ければそれでいい。これがわたしの信条です。会社が変わらなければ業績は落ち込み、歌舞伎町で飲んだくれることができなかった。だから、わたしは現場へ行って嫌な話も聞きますし、大変な思いをしてでも会社を変えた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授