待ちの姿勢ではない球団経営を 横浜DeNAベイスターズ・池田社長2012年 それぞれの「スタート」(1/3 ページ)

日本のプロ野球界において、7年ぶりに新球団が誕生した。経営面でその舵取りをする横浜DeNAベイスターズの池田純社長が語る未来図とは――。

» 2012年01月01日 00時00分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]

 TBSホールディングスからの球団買収によって、昨年12月に誕生した「横浜DeNAベイスターズ」。プロ野球界における新チーム誕生は、2004年の福岡ソフトバンクホークス以来、7年ぶりとなる。

 しかしながら、前途は多難だ。ベイスターズは4年連続最下位で、主催試合の観客動員数も12球団で最低。さらには、年間20億円以上ともいわれる赤字を抱えるなど、戦力面、経営面ともに厳しい課題に直面している。いかにしてこのチームを改革していくのか。池田純球団新社長に聞いた。


観客増に向けた3つのポイント

――まずは、2012年の目標を教えてください。

横浜DeNAベイスターズの池田純社長 横浜DeNAベイスターズの池田純社長

池田 チームが強くなることもそうですが、観客動員数を増やすこと、現在横浜スタジアムへの来場者(主催試合)は年間110万人弱ですが、この数字をどこまで増やせるかが重要な目標だと考えています。

 これに関連する興味深い調査があります。横浜と埼玉という首都圏を対象に行った「あなたの応援する球団はどこですか」というアンケート調査によると、横浜エリアで「ベイスターズ」と答えた人数と、埼玉エリアで「ライオンズ」と答えた人数はほぼ同じでした。一方で、2011年の観客動員数をみると、横浜スタジアムの約110万人に対し、(埼玉西武ライオンズの本拠地である)埼玉ドームは年間約160万人と、50万人の差があるのです。裏を返すと、DeNAベイスターズの観客数は50万人増える可能性があるととらえています。

――どうすれば来場者の数は増えるのでしょうか。

池田 何かひとつを変えれば一気に観客が押し寄せてくるということは当然ありません。いくつか要素がある中で、特に3点が大切だと考えています。

 1つ目は、「注目され続けること」です。現時点では、新規参入やそれに伴うチーム編成、監督などに注目が集まっていて、まさに一挙手一投足報じてもらえていますが、今後も「新しい」こと、「変わる」ことを続けて、継続的に興味を持ってもらえることができる球団であることが不可欠です。

 次に、「強いチームづくり」です。話題性だけで中身が伴わないのでは意味がありません。チームが強くなるのは、ファンを増やすことと、多くの方々にスタジアムへ足を運んでもらう大きな要因です。ただし、いきなり最強のチームになれるとは私も考えていません。球団オーナーの春田(真、DeNA会長)が会見で「1年目に最下位脱出、3年以内にクライマックスシリーズ進出、5年以内に優勝」と表明したとき、オーナーの発言としてそれでいいのかという意見もありましたが、チームを強くしていくということを本気で考えている姿勢だと思っています。夢を見ることも大好きですが、現実を直視していきたいと考えています。

 3点目は、「場の楽しさづくり」です。横浜スタジアムに来た人たちが、「ここに来ると楽しい」と記憶に刻んでもらえる空間・空気づくりが不可欠です。例えば、試合に併せてスタジアムの周辺でイベントを行ったり、スタジアムの中でもファンの方々、観客の皆さんに広く喜んでいただける面白い工夫をしたりと。横浜市も、開幕までにスタジアム周辺の砂地を芝生にするなどの整備工事を実施してくれています。野球を愛するファンから親子で観戦にいらっしゃる方々まで広く野球とその時間を楽しめることが大切だと考えています。

――ファンの満足度を上げるためにITは活用できるのでしょうか。

池田 そうですね。オーソドックスですが、まずはWebサイトでのチケット購入をもっと便利にすべきだと思っています。例えば参考なるのが、TOHOシネマズのWebサイトです。映画を観るときに、映画館でチケットを買う人もまだまだ多くいると思いますが、事前にWebでチケットを購入したり座席予約したりする人も増えています。同社のサイトは、「チケットを売るためのサイト」になっています。DeNAベイスターズもよりユーザビリティの高いチケット購入のためのサイト作りをしていくべきですし、Webサイトをより戦略的にしていく必要があります。

 そのほかにもITを使って新しい楽しみ方を提供できる部分は多いと思います。ただし前提として、DeNAがIT企業だからITに固執するというような考えはありません。DeNAはモバイルサービスを提供していますが、世の中にはモバイル端末やモバイルゲームに精通している人ばかりではないと思います。ITやモバイルはフル活用しますが、モバイルを使わないでも楽しめる、野球本来の楽しみの強化のほうが大切です。

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