それに対して、日本は何と弱腰か。しかも弱腰で対応する政治に、国民はさっぱり怒らない。ましてや、行動も起こさない。例えば記憶も新しい、尖閣諸島付近海域で日本の巡視船が中国漁船に体当たりされた事件だ。詳細は衆知の事実なのでここでは省略するが、中国が次々と出してきた報復処置について触れる。例えば、閣僚級の往来停止、航空路線増便交渉の中止、日本への中国人観光団の規模縮小、日本人大学生の上海万博への招致中止、中国トヨタの販売促進費用を賄賂として罰金を科料、レアアースの日本向け輸出の意図的遅延、そして遂には中国滞在中のフジタ社員4人を「軍事管理区域を撮影した」として身柄拘束したなどなど、はしたなくも姑息で理不尽な報復に出て、まるで脅迫したのだ。
一方日本ではこれら一連の事件に対し、こともあろうに官房長官が「日本も中国も偏狭で極端なナショナリズムを刺激しないことを政府の担当者として心すべきだ」として、事を荒立てず穏便に済ませることを主張した。国家戦略担当大臣も、「(中国は)国内の世論対策という側面もあるのではないか。日本は法治国家なので法にのっとって対応するのが大切だ」と、いかにも物分りの良さそうなことを言って矛を収めようとした。
この他にも、日本が外国に国家主権を侵害されても、怒りもせず行動もしない例は数多い。
惻隠の情なのか、長いものには巻かれろなのか、日本政府も国民も怒りを表に出さない、意思表示の激しい行動もない。自己主張がないのだ。そのうち、喉元過ぎて熱さを忘れる。
ここで指摘したいことは、上例の事の良し悪しは別にして、怒ること、それを素直に行動に表すこと、自己主張をすることがなければ、事態は動かないということだ。
国内事情に目を転じると、冒頭にも触れたように今の日本は混迷を深めている。円高で多くの企業は国外へ活路を求め始めている、株が大幅安を続けて、老年者生活不安・年金/保険運用不安・消費低迷・企業収益圧迫・企業資産評価下落などをもたらしている、外交空白が続き、経済グローバル化が遅れて世界から疎外され、マニフェストの揺れで国の先行きが定まらず混乱している。それというのも、与野党共に党内融和や党利党略や選挙票獲得を価値判断基準におき、政策は二の次、国民生活第一が空虚に響くばかりだ。
われわれ国民は、激怒しなければならない。その怒りを行動に出さなければならない。そうしないと、事態は変わらない。寡黙は、何も起こさない。怒りを表し、自己主張や行動を起こす仕方はいろいろある。もちろんデモもいい。昨今力を持つインターネットの活用(Twitter、ブログなど)もある、経済団体や業界団体が強力な意思表明や意見書を出す方法もある、例えば「今の政治のていたらくを批判し、日本の将来像」をまとめて政権や政党に公開質問状を突きつけて、回答を要求する手もあろう。
ひとつ例を挙げよう。昨年11月23日勤労感謝の日に、「就活ぶっこわせデモ」が東京の新宿で行われた。昨年10月1日現在の大学生の就職内定率が59.9%、一昨年同時期を2.3%上回ったが、リーマンショック直後の2008年同月69.9%に比べても低い。就職活動や採用のあり方に異議・不満を持つ学生の怒りが爆発したのだ。新卒一括採用、就活早期化、大学の就職予備校化などの弊害、さらに内定が取れないことを「自己責任」で片付けられるなどの是正を求めた。今まで怒りが爆発しなかったのが不思議なくらいだ。
世論調査で、デモに政治を動かす力が「ない」50%が、「ある」44%を上回っている(朝日新聞'11.12.26.)。しかし、小さな動きでも、やがて大きな変化の引き金になる。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授