Project Vulcanが社内の優れたワーク・エクスペリエンスを目指したのに対して、パートナーや顧客向けの優れたWebエクスペリエンスを目指した「Project Northstar」は、IBM Customer Experience Suiteなどによって既に一部が具現化し始めている。このLotusphereでは、「Intranet Suite Componets」のβ版がリリースされ、デモも行われた。IBM Customer Experience Suiteではアナリティクス機能が統合されているため、コンテントの変更による顧客のレビューやコメントを分析、その効果を測定しながらWebエクスペリエンスを改善できるが、新たに追加されたIntranet Suite Componetsを利用すれば、その改善作業を社内のコミュニティーが効率良く進められるようになるという。
IBMではモバイル環境への対応を最優先で進めている。ソーシャルとモバイルの組み合わせは、働き方が多様化する企業内はもちろん、パートナーや顧客向けでは必須といえるからだ。既にWebベースでConnectionsのほとんどの機能がモバイル端末からアクセスできるが、iPhone/iPad、Android向けにそれぞれの端末の機能やサイズに合わせたネイティブアプリケーションの開発が進む中、今回のLotusphereではWindows Phoneへの対応も表明された。
ソーシャルソフトウェアやモバイルによって伝統的なビジネスの変革と再定義に取り組んだのが、Bayerと同じドイツのGADだ。同社は金融機関約430社のデータ処理センターを運営する。
「銀行の業務、銀行と顧客の関係、そして銀行とわれわれのビジネスを変革するため、ソーシャルを活用した」と話すのは、GADの取締役を務めるイエルク・ドレインヘーファー氏。彼らが選んだのはIBMのクラウドサービス、「IBM SmartCloud for Social Business」だ。
このクラウドサービスは、「IBM LotusLive」の名称を変えたものと考えていい。会期中、IBMでソーシャルソフトウェアを統括するジェフ・シック副社長に話を聞いたが、「ブランドの簡素化」を理由に挙げた。OpenOffice.orgベースの「LotusLive Symphony」もこれに伴い「IBM Docs」へと呼び名が変わった。
2008年、Lotusソフトウェア部門のGMとしてLotusLiveの構想(コードネーム:Bluehouse)を披露したマイク・ローディン氏は現在、ソフトウェアソリューショングループを統括する上級副社長。「単一のスケーラブルなプラットフォームでビジネスの変革を支援するのがIBMのクラウドサービス。初期投資を抑えられるばかりでなく、次々と登場するモバイル端末への対応に追われることもない」とIBM SmartCloud for Social Businessを売り込む。
お気づきだろうが、Connectionsからも「Lotus」の文字が消えている。Lotusブランドがやや後退すると受け取られかねないConnectionsやLotusLiveの名称変更だが、コラボレーションの領域では顧客企業がアナリティクスをはじめとするIBMのほかの技術を必要としているのも事実だ。時代は「クラウド前夜」であり、Lotus買収から既に15年以上が過ぎている。
今年のLotusphereでは、ソーシャルメディアが生み出す膨大なデータ、いわゆる「Big Data」を分析するクラウドサービスも「IBM SmartCloud」のブランドの下で発表している。これにより企業は、市場の動向に素早く対応、さらには将来をも予測する、より深い洞察を得ることができるという。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授