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» 2012年04月18日 08時00分 公開

海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点:ネットにつながった危険な顧客 (2/3)

[エグゼクティブブックサマリー]
エグゼクティブブックサマリー

「ユナイテッド航空、ギターを壊す」

 ミュージシャンのデーブ・キャロルは、バンド仲間とともにシカゴに行くためにユナイテッド航空を利用しました。シカゴの空港に着くと、バンド仲間がキャロルに、ユナイテッド航空の荷物係りがキャロルのギターケースを乱暴に扱っていたのを見たと教えました。

 キャロルの3500ドルのギターは破損してしまい、そのことについて何人ものユナイテッド航空の従業員に苦情を申し立てましたが、結局満足のいく対応はしてもらえませんでした。そこでキャロルは「ユナイテッド航空、ギターを壊す」というタイトルの音楽ビデオを作り、YouTubeに投稿しました。この動画はネット上で大ヒットとなり、閲覧者は900万人を超えました。エコノミスト紙によると、この出来事のせいでユナイテッド航空の株価は10%下落し、その損失額はおよそ1億8千万ドルにのぼるとされています。

 キャロルの動画はいまだに多くの人に閲覧されており、ユナイテッド航空はダメージを受け続けています。しかし、とてもショッキングなことに、ユナイテッド航空はこの教訓から何も学ばず、キャロルに連絡を取りませんでした。キャロルはギター破損事故に関する動画をさらに3本作りました。さらに、CBS、CNN、ABCなどのアメリカのテレビ番組に出演しました。

 これによってユナイテッド航空に対しさらにマイナスのイメージが生まれました。ユナイテッド航空は、最初の動画が投稿された時点でキャロルとの問題を解決していれば、マイナスイメージを和らげることができたはずです。消極的な姿勢が、ただでさえ悪かったイメージをさらに大きく悪化させたのです。例えて言うならば、インターネットはガラガラヘビです。最初の威嚇音ですぐに反応できるようにしなければなりません。さもなければ、噛まれてしまいます。

 この事例は確かに極端なものかもしれません。しかし、ネットの普及した現代だからこそ、ここまで過激な仕返しが顧客によってなされるのです。それくらいに企業側も慎重にならねばならないと学ばされます。

サービス協定

 サービス協定は企業と顧客を縛り付けるものです。この暗黙の協定は、何世紀も昔からある伝統に基づいたものです。残念なことに、人が直に提供する「人間味のある」サービスは、現在の人間味のない「機械による」サービスにとって代わられてしまいました。人間味のあるサービスは、長い間、サービス協定の明確な特徴でした。例えば、知識の豊富なテレフォンオペレーターや受付係の仕事は、しゃくにさわる自動電話応答システムに奪われてしまいました。

 いかなる協定も、必然的に2人の当事者がいることを前提としています。サービス協定の場合、それは企業と顧客です。協定のいかなる変更にも、両当事者が同意しなければなりません。しかし、今日のサービス協定のあらゆる大きな変更は、企業の手によって行われてきました。そのため、反抗的な顧客は今、サービスとはどのようなものであるべきかに関する条件を自分たちで決めようと試みています。

 例えば、今多くの企業がセルフサービス式を採用しています。それによって顧客は、図らずも自分自身に極上のサービスを提供しています。その結果、顧客は、顧客が自分自身に提供しているのと同じ質のサービスを、企業が提供することを期待しています。さらに、顧客は以前と比べて扱いにくくなっています。その理由は、現代の顧客に見られる次の性質にあります。

現代の顧客に見られる特性について

・期待過剰

 顧客は、今日のサービスの標準を作り出したザッポス社やアマゾン社のような、サービス業大手が提供する素晴らしいサービスと同じだけのものをすべての企業に期待し求めています。その標準に辿りつけない企業は、どんどん顧客を失うことになります。しかし、多くの企業が自分達のサービスの質について呪術的思考に陥っているように思えます。調査によると、企業の50%が自分達のサービスの質は向上していると考えていますが、顧客の75%は向上していない、あるいは悪くなっていると考えていることが分かりました。

・ロイヤルティの欠如

 顧客ロイヤルティは、時代遅れの考えになりつつあります。自称「ロイヤルティのある顧客」のわずか10%しか、否定的な経験をした後でもその企業に忠誠心を示し続けないことが分かっています。調査によると、小売店の上顧客の85%が、買いたくなるような刺激があれば、他のお店でも買い物をすることが分かりました。顧客のロイヤルティは信頼によって左右されます。もし信頼の溝が生まれれば、ロイヤルティは消えてしまいます。

 企業は広告を使って「私達は信頼に足る存在だ」というメッセージを発しますが、顧客がすでに信じているものの方が重要なのです。

・うるさい

 顧客の10人に4人が、企業は顧客の意見を無視していると考えています。無視された顧客はうるさくなります。口コミの力は確かに大きいですが、それよりも飛躍的に影響力が大きいのが「ネット上の口コミ」です。アメリカの消費者は、毎年5,000億個以上の製品あるいはサービスに対する感想をインターネット上に載せ、広めています。

 不満を持った顧客はブログや動画などのオンライン・コミュニケーション・ツールを使って、不快な気持ちを広めます。サービス協定が破られ、粗末なサービスを提供されると、顧客は、問題の兆候が見えた時点で、ネット上で不満を爆発させるのです。そして、企業が顧客の難しい要求に答えられないと、顧客はますます辛口の意見を言うようになります。

・自己愛的

 今、企業は顧客個人の好みに合わせた製品やサービスを提供しています。例えば、コカコーラ社は、ファンタ、スプライト、ミニッツメイド、コーラ・ゼロなど数多くの清涼飲料水を販売しています。このように企業は、「まさに顧客が欲しいものを、顧客が欲しいタイミングと望む形で」提供しようとしています。例えば、ロサンゼルスにあるウィンホテルは、この「個人化」の質を高めています。

 ルームキーや客室の電話機、テレビ画面などに宿泊客の名前(セキュリティの問題上フルネームではありませんが)を表示しているのです。顧客はこのような個人化は企業の義務だと思っています。彼らは「私の好きな方法でもらいます」というスタンスでいるのです。それに沿って製品やサービスを考えてください。

 あふれるほどに商品やサービスが増え、顧客が自分の気に入ったものを自由に選べるようになりました。それにプラスして行った効率化は、更に企業と顧客の間に距離を置く結果となってしまいました。そのため、顧客の企業に対するロイヤルティは薄れることとなったのです。

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