人事考課ハンドブック海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(1/3 ページ)

洋の東西を問わず人事考課はやっかいなようだ。しかし企業が成長し続けるためには欠かせない。では、理想的な人事考課とは。

» 2012年06月13日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー]
エグゼクティブブックサマリー

 この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。

3分で分かる「人事考課ハンドブック」の要点

  • 管理職と従業員は一様に、人事考課を不快なものだとみなしている。しかし、必ずしも不快なものではない
  • 人事考課は、生産性を向上させてくれる、価値のあるものになり得るものであり、人事考課を行えば企業は目標を達成しやすくなる
  • 人事考課は継続的に行うべきもので、一度きりで終わらせるべきではない
  • 人事考課の面談の準備は適切に整えること。よく考えずに行えば、従業員の貢献を重要視していないと思わせてしまう
  • 給与の問題は、人事考課とは別の機会に話すようにすること
  • 企業の給与システムと評価方針は最初から明確にすること
  • 最近の成果を過度に重要視して評価したり、個人的な偏見で評価を歪めたりするなど、よくある人事考課エラーを避けること
  • 適切に記録し、公正に振る舞う事で、差別訴訟を防ぐことができる
  • 人事考課手法は、テレコミューティングやジョブ・シェアリングなど、新しい仕事のやり方を考慮したものでなければならない
  • 従業員の世代によって、必要な評価手法は異なる

この要約書から学べること

  • 人事考課が、管理職にとって価値のあるツールである理由
  • 効果的に人事考課を行う方法

本書の推薦コメント

 次のような人事考課は、決して好ましいものではありません。「上司も部下も不快に感じている。本当に重要な問題を不適切に処理している。あるいは、よく考えずに人事考課書類に記入している。どちらも話し合いに満足していない」。もし、人事考課でこのようなことが起きているのだとしても、安心してください。変えることができます。

 もし人事考課を適切に進めることができれば、上司であるあなたも部下も満足することができますし、生産性を高めることや、優秀な部下を引き留めることもできます。人事コンサルタントであるシャロン・アームストロングは、実践的な手引きと一緒に、便利なチェックリストや人事考課書類のサンプルを提供しています。人事考課に不安を持っている管理職は、アームストロングの熟練のアドバイスに従えば、すぐに人事考課を企業の目標を達成するための生産的で効果的な手法だと思えるようになるでしょう。

 人事考課とは具体的に何をすることでしょうか? 言葉通りの意味合いを示すとすれば、「仕事の結果または能力の程度を判定し、それを働く人々の処遇に結びつけること」をいいます。しかしながら、人間の行なった結果や能力をどのような基準で判断するのでしょうか? 誰しもが納得できる均一の基準を持って判定をするのであれば、問題はないでしょう。

 しかし、その基準そのものが人それぞれ異なるが故に、その評価が会社の考えるものと従業員の考えるものに誤差が生じることが多々あるのです。「こんなに成果を上げているのにそれなりの評価をしてくれない」と不満を漏らす従業員がいたと思えば、「目標としている所にはまだ届いていない」と評価する会社側……そんなギャップが多くの企業で発生しているのではないでしょうか。

 人事考課とはある意味では、従業員のモチベーションアップと会社へのロイヤルティー向上のためのものであり、最も慎重に且つ客観的に行うべきものであることは事実です。ともあれ、人事担当者は、こうした人事考課の時期になるとどうしても悪者になってしまうこともまた事実です。では、どのような人事考査を心掛ければ、会社と従業員の間にギャップを生まず、悪者にならないで済むのでしょうか?

 本書「人事考課ハンドブック」に於いては、「難しい人事考査についての考え方」と「どのようにすることで理想的な人事考課ができるようになるか」について記載されています。そして、人事考課とは企業が成長し続ける限り、永続的な進化が要求されます。それ故に多くのノウハウを知る必要があります。経営者、役員、人事担当者のみならず、一般の社員の方にもこの本を読むことによって組織のあり方を再認識できると思います。

人事考課は虚しい?

 管理職と従業員は、ある共通する意見を持っています。それは、「人事考課は、不安で満ちた行為である」という意見です。管理職は人事考課を苦痛な仕事だと考えています。その理由は主に、準備をする時間を取ることができないからです。従業員は、有意義な話し合いのできない、虚しい儀式だと思っています。しかし、必ずしもそうとは限りません。人事考課は、管理職が生産性を向上させるために使える最も価値のあるツールの1つになり得ますし、人事考課を行うことで企業は目標を達成し易くなります。管理職はよくある落とし穴を避け、部下の人事考課に使える手法を新たに生み出す必要があります。

 人事考査とは確かに難しい仕事です。しかし、人を評価することは、人を客観的に見て、企業の目標達成のための指針を決め、社員の生産性を上げることにあります。「企業は人なり」という観点から考えれば最も重要な仕事と言えるでしょう。

準備をする

 人事考課を行き当たりばったりで行ってはいけません。時間をかけて準備してください。まず、誰を評価するのか、何を評価するのか、そして、なぜあらゆる方向から評価するのか理解してください。そして、次のアドバイスに従って準備を整えてください。

人事考課に必要な準備をする

 ・継続的に話し合う:人事考課を年に一度きりの取り組みにするべきではありません。部下のことをよく知り、1年を通して気軽に話し合ってください。

 ・部下に敬意を払い、秘密を厳守する:適切な準備をすることで、人事考課が重要なものであることを示すことができます。反対に、よく考えもせずに評価することは、部下に対して失礼です。また、面談で話したことを他人に漏らしてはいけません。

 ・批判的にならない:短期間の評価を継続的に行い、誤った第一印象を与えないようにしましょう。他人を完璧に理解することはできません。

 ・分かりやすく話す:自分の意見は分かりやすく話し、裏付ける証拠を示してください。

 ・職務を理解する:正確で最新の職務明細書を手元に用意し、それを使ってください。

 ・常に記録する:従業員の人事考課は、従業員の仕事ぶりを1年を通して常に記録しておいた方が、一度の面談で1年分さかのぼるよりはるかに簡単になります。

 ・企業の目標を明確に理解する:企業の目標に沿って、すべての部下の成績を評価してください。

 ・「基本原則」を守る:上司自身も部下も、評価が行われる前に、上司はどのように評価を行うつもりなのか理解している必要があります。

 ・給与の事は別の機会に話す:人事考課の中で給与や昇給について話すことは避けてください。難しいことかもしれませんが、給与については別の機会に話し合うことが望ましいです。

 従業員もまた、人事考課に備える必要があります。仕事で何を成し遂げたか、何を新たに学んだか、業務を遂行するためにどのような協力関係を作ったか、部下に考えさせてください。上司も部下も、人事考課に対して責任を負うべきです。人事考課に対して誠実になり、相手の話に注意深く耳を傾けるべきです。また、上司と部下が互いの成功とサポートを常に認識していると、人事考課をスムーズに進めることができます。

 人を客観的にみて、その人が企業でどういう役割を担っているのか?それを明確にすることが人事考課なのですから、準備は万全にするべきです。ここで言及されている9つの項目を順守して行なってください。 

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