どこから褒めるか、どこまで褒めるか田中淳子のあっぱれ上司!(2/3 ページ)

» 2012年07月24日 08時00分 公開
[田中淳子,ITmedia]

 図を使って説明してみよう。上司が部下に対して抱く期待値がある。ここを±0とする。そして、期待以上の成果を+α、期待以下の成果を−α(という表現はないかもしれないが)とする。

 一般に、褒める場合は+αが対象だ。「叱る」や「改善要求を出す」のは−αである。では±0はどうなるのか? 褒められもせず叱られもせず、良いとも悪いとも言われないのが、ちょうど±0の領域だ。

 でも考えてみると、もし多くの部下が期待以上の成果を出せるのであれば、それは最初から「期待値が低かった」のであろうし、期待以下の成果を出す部下が大半であれば、それは「期待値が高すぎ」たのではないだろうか。一人ひとりに対して、適正な期待値が設定されていれば、たいていの部下の成果は±0の周辺に集中するはずだ。言い換えれば「期待された通りにきちんとできた」人が大半を占めているに違いないのだ。

「私は見ていますよ」と伝える

 しかし期待された通りにきちんとできた場合、上司は「そんなの当然だよ」と特に何も言わない。ここは是非、褒める領域を+αだけではなく、±0まで拡大してみてもらえないだろうか。

 つまり、できて当たり前だったら、期待通りだったら、「期待通りだった」という事実を部下に伝えるのである。大絶賛する必要はない。事実として「期待通りだった」と伝えるので十分である。「これ、できました」と提出された書類が格別素晴らしいとは思わなかったとしても言いようはある。「必要な仕様を満たしているね」でも「時間内に終わったね」でもいい。

 納期を例に考えてみよう。

 Aさんは納期に数日遅れて書類を提出した。Aさんの成果は、期待値を下回る−αと見なされ、「もっと早く出すように」などと指摘される。

 Bさんは納期よりもうんと早く書類を提出した。これは+αの成果なので、「おおー、早いねえ。助かるよ」「仕事が早くてスゴイねえ」と褒められる。

 そして、Cさんは納期通りに提出した。もちろん品質にも問題がない。でもBさんのように格別“早い”わけではない。上司はCさんが提出してきたものを黙って受け取り、それでおしまいになる。

 このとき、Cさんに「納期通りに提出してくれてありがとう」と一声かけていたらどうだろうか。Cさんは「きちんと納期を守ったことを上司が認めてくれた」と感じ、次回も「納期を守ろう」と意識づけられるはずである。

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