どこから褒めるか、どこまで褒めるか田中淳子のあっぱれ上司!(3/3 ページ)

» 2012年07月24日 08時00分 公開
[田中淳子,ITmedia]
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 人は誰でも、自分自身や自分のしていることを認められたいと思っているものだ。これを“承認欲求”という。承認は、文字通り認めることである。

 「素晴らしい」と言うほどではなくても、「納期通りだね」と一声かける。これで十分“承認”になる。「あなたが“納期”を守って提出したことを私は見ていますよ」と伝えたことになるからだ。絶賛されたわけではなくとも、何か声をかけられたら部下はそれだけでうれしいし、やる気も出るものである。

 褒める領域を+αだけでなく、“期待値通り=±0”の領域にまで広げてみる。そして、部下に何か言葉をかける。「期待通りの成果だった」「いつも正確だね」「丁寧に応対しているね」など、あえて言葉に出して伝えるのである。言われた側は、「そこを見られているのか」「そういう風に思ってもらえているのだ」とうれしく思い、指摘された箇所を少なくとも劣化させないようにと努力をするはずだ。


 勤務先で月に1回、同僚数人と持ち回りでコラムを書いている。先日、その月担当の後輩が「レビューしてください」とコラムを印刷して持ってきた。気になった言い回しや展開に赤ペンでマークし、口頭で「この辺りはこういう風にしてはどうか」などとフィードバックしたが、それはごくわずかな箇所だけであり、全体は彼女らしい内容でとても読みやすいものだった。

 そこで私は、最後に紙の右上に大きく“花丸”を書いて手渡した。彼女はその花丸を撫でながら、「これが一番うれしいです! これを励みにもうちょっと考えて、手を入れてみます」と、笑顔で席に戻って行った。小学生みたいだけれど、こんなことでも人は元気が出るようである。言葉で何かを伝えるのは照れくさいという管理職は、花丸を書いてはいかがだろうか。30代でも意外に喜ぶものだ。お試しあれ。

著者プロフィール:田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!


Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko


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