楽天は、2012年を「真の世界企業の幕開けの年」とし、今後海外展開を更に加速していく方針である。5月にはマレーシアに進出すると発表した。2008年に台湾に進出してからわずか4年で12カ国目の展開となる。これまでは、買収もしくは現地企業との合弁会社の設立でビジネスを展開していたが、今回は初の単独進出になる。「27カ国体制」を目標に海外進出を加速する楽天だが、今後順調に海外展開を継続できるであろうか?
楽天は、海外の業績を公表していないため、業績からパフォーマンスを測ることはできない。公表されている業績では、2011年度は売上高が前期比9.8%増の3799億円、営業利益が前期比11.9%増の713億円と、ともに過去最高を記録している。また、海外展開では「大やけど」をする前に一旦撤退を決めた中国以外は積極的にビジネスを進めている。
この状況から判断すると、中国以外の海外ビジネスは恐らくうまくいっているのだと想定される。そうだとすれば、つい3年前まで国内に閉じていた企業が短期間に成功裏に海外展開を行っている稀有な例といえるだろう。しかし、楽天の会長兼社長の三木谷氏は、雑誌などのインタビューで「これでも遅いぐらいだ」と語っている。多くの日本企業から見れば羨ましい限りのパフォーマンスだが、なぜ楽天はこのような展開が可能なのだろうか?
楽天には、三木谷氏が1997年の創業当時から会社の壁に張り出して社内で浸透を図ってきた「成功の5つのコンセプト」という行動規範のようなものがある。その中に、「顧客満足の最大化」があるのだが、これは楽天のビジネスモデルの根幹をなす最も重要なコンセプトであろう。楽天は、「ネット上に銀座4丁目の交差点を作る」と言って、社員6名、加盟店13店舗でビジネスをスタートさせた。そして、わずか3年で加盟店を4833店舗にまで拡大し、店頭公開を果たした。その際に培われたのが、今でも続くWIN(加盟店)-WIN(消費者)-WIN(楽天)のビジネスモデルである。
ネットモールで成功するためには、アクセスの多いサイトを作らなければならない。そのためには、人気のある出店者を募らねば、あるいは作らねばならない。当時、楽天社員はまさに「どぶ板営業」を実践し、出店者と一緒に汗を流して考え、出店者を成功させるためのサポートを行ったそうである。このような出店者へのサポートは、当然のことながら手間暇が掛かる。しかし、出店者のビジネスがうまくいけば、出店者との強い絆ができる。これは、簡単には覆らないものとなる。
時間は掛かるが強固なビジネス基盤を作りつつ成長する、これは楽天にとって直接の顧客である出店者の満足の最大化があってこそ実現できると考えているのである。Eマーケットプレースのプレーヤーとしての存在意義、出店者を徹底的に支援して成功させてこそ自分たちの成功がある、この考えを組織で実践することで楽天は日本で成長してきたといえる。
楽天は、このコンセプトを海外展開でもそのまま実行していると思われる。その象徴の一つが、昨年11月に買収したカナダを本拠として電子書籍リーダーやコンテンツ事業を手掛ける「Kobo(コボ)」だろう。楽天は、今月電子書籍端末「Kobo Touch」を7980円という低価格で販売すると発表したが、これはコボが開発した端末である。コボは、これまで海外で低価格の電子書籍を発売してきているのだが、大手書店などの有力小売りと提携してビジネスを展開しているところに特徴がある。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授