日常的に問題意識を持って生活する。政治、経済、社会すべてに問題意識を持ち、仲間と議論しながら自分の考えを整理しまとめる。常日頃から心していれば、恐れることはない。
新卒者の就職実績状況、就職に臨む状況などを知るにつけ、腹が立ったり、悲しくなったり、あるいは不満を感じたりする。就職希望者に対して、考え方を変えて伸び伸びと臨めと忠告したい。ただし、良識を身につけることを忘れずに。それらの思いがあまりにも強いので、今回はかなりの常識論を展開することになるが、しばし一緒に考えてほしいものである。
8/28付け日本経済新聞に、いささか衝撃を受ける記事を見た。今春の大学卒業者約56万人のうち6%にもなる約3万3千人が、行き先が決まらないのに進学も就職も準備していないという。いわゆるニートが大半だと、推測する。日本の労働力の劣化や、生活保護受給者の増大が懸念されると指摘している。就職・進学を準備している者、約5万3千人を加えると、就職も進学もしなかった者は約8万6千人、卒業者の何と15%以上にもなる。
同じ文科省の学校基本調査では、さらに非正規社員やアルバイトを含めると卒業者の23%にも上る12万8千人が安定した仕事についていない。経済状況が好転せず、雇用環境が依然として厳しいなかで、学生間に知名度の高い企業を志向する傾向が根強く、採用を希望する中堅中小企業とのミスマッチがあり、就職先が決まらず、途中で就職活動をあきらめてしまった学生も少なくないようだ。(読売新聞 9.3.)。極めて深刻である。
ここで、企業選び、就職試験、入社直後の仕事の取り組み方と3つに分けて、もっと伸び伸びと、もっと広い視野で、ただし良識を持って対応すべきであると忠告してみたい。
まず、企業選び。そりゃあ、知名度が高い企業、あるいは大企業の方が一見魅力はあろう。しかし知名度の高さが何だ、大企業が何だというのか。企業の本当の魅力は、何か。賃金が違う? 思うほどの大差はない。企業規模別生涯賃金(退職金含む)で比較してみても、大学卒の一般労働者男性で(カッコ内は女性)、1,000人以上規模で4億3,330万円(2億4,980万円)、100〜999人規模で3億6,310万円(2億3,730万円)、10〜99人規模で2億9,820万円(1億8,150万円)となり(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計−労働統計加工指標集−2005」より)、38年間勤務するとして平均年収換算で、企業規模間で185万円(33万円)から356万円(180万円)の差しかない。「しかない」か、「もある」かは、考え方次第である。
この位の差は、当然あろう。しかし、10〜99人規模で生涯平均年収(あくまでも平均だが)が784万円あるが、それで十分だ。住む所も、食べ物も、着る物も、子供の教育も、海外旅行などの趣味も、別に高級志向でなくても、十分楽しめ、十分生活できる。老後もやっていける。常に豪華を狙わなくても、ささやかでも1点豪華か2点豪華主義を楽しめるだろう。それなりの人生を、家族、友人、地域など多くの人々と楽しく充実して送ることができれば、それでよいではないか。
会社のブランドが問題だと? 大企業が経営に行き詰まる時代、企業の浮沈が激しい時、何がどうなるか分からない。そもそも人目で会社を決めるのは、間違っている。親の希望? 親のための人生ではないと割り切る。笑顔で充実した企業人生活を送ることが、結果的に一番親に喜ばれるのだということが、そのうち親も自分も分かってくる。
筆者の身辺にも、中小零細企業で生き生きと活躍している若者が沢山いる。彼らは、自分たちが属する企業に愛着と誇りを持っている。当初は落胆甚だしかった親たちも、今や生き生きとして輝いている子供を見て満足している。むしろ、いつまでも「もっとマシな企業に行きたい」とウジウジ考えていると、周りも自分自身をも不幸にしてしまう。
例え零細企業でも、働きがい、社会への貢献のしがい、すなわち生きがいを見つけることはいくらでも可能である。ただし、本人の気の持ち方次第、腰が引けていてはダメだ。企業選びは金だけが基準ではない、親のためでもない、まして他人のためではない。自分自身の人生のためなのだ。無意味なしがらみを振りほどいて実質を取りに行こうではないか。広い視野を持って、伸び伸びとやろうではないか。
次に、入社試験である。まず学科試験は、在学中に普通に学ぶことが大前提である。大学の講義や試験など、難しいことは全くない。非常識なほどの手抜きをしないで普通に学べば、それで十分である。四六時中遊びふけたり、講義をほとんどサボったりすることは、論外である。そういう者は卒業の資格、いや在学の資格がない。さっさと自主退学すべきである。新聞を常識的にきちんと読む、ほどほど読書もする。テレビもバカ番組ばかりをノホホンと見るのではなく、問題意識を持って見る。先生、友人や仲間と議論をする。そういう当たり前のことをしていれば、学科試験は全く問題ない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授