「出現する未来」を実現する7つのステップ――観る:Seeing(後編)U理論が導くイノベーションへの道(1/2 ページ)

それぞれが自分の行動や仕事の仕方を見直すサイクルがしっかりと組み込まれていれば、サービスの質はどんどん高くなり、他とは一味違ったサービスが提供できるようになる。

» 2012年10月18日 08時00分 公開
[中土井 僚(オーセンティックワークス),ITmedia]
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 「保留」が習慣化している人は「センス オブ ワンダー(驚きのセンス)」と言われる能力が高くなり、一般的に好奇心旺盛な人、柔軟な人として周りから認知されるようになります。そうなれば、「あの人は、よく話を聞いてくれる」とか、「あの人と話していると、特段アドバイスをされたわけでもないのに、自分の考えがまとまっていくから不思議だ」と言われるようになります。

 この「保留」は、とりわけ日常のコミュニケーションの質を高めるための手段といえます。この「ダウンローディング」から「観る(Seeing)」への移行が起こりやすくなるよう組織的に取り組んでいる事例を1つ紹介しましょう。

 1997年度に日本経営品質賞を受賞したこともある「千葉夷隅ゴルフクラブ」というゴルフ場なのですが、そこでは「ダウンローディング」から「観る(Seeing)」へとスタッフ全員が移行しやすい状態を仕組みとして構築し、それぞれが自分の行動や仕事の仕方を見直すサイクルがしっかりと組み込まれているようです。

 中でもわたしが興味を引かれたのは、田原俊彦さんの歌のタイトルから名づけられた「ハッとして! Good」というカードの運用です。このカードは、日々仕事をしている中で、「ハッとしたこと」を各自が随時カードに記入し、それを組織的に共有するというものです。

 例えば、キャディーさんのサービスに対しての感謝や不満を、お客様のから直接聞くことはほとんどありません。しかし、ゴルフが終わって、一緒にラウンドした友人とともに、一汗流すためにお風呂に入って、身体を洗ったり、湯船につかったりしてリラックスした時に、「あのキャディーさんは、気が利くよねえ」とか、「あのキャディーさんは、しゃべり過ぎだよね」いったことを口にするそうです。

 そのことをお風呂の掃除担当の人が耳にしたら「ハッとして! Good」カードに記入して報告します。それは、キャディーさんにフィードバックされたり、時にはフロントに即座に共有され、お客様が帰られる際に、フロントから一言感謝やお詫びを伝えたりするといった運用がなされているとのことでした。

 こうした活動が徹底されているのであれば、サービスの質はどんどん高くなるでしょうし、他とは一味違ったサービスが味わえるゴルフ場として口コミで広まることも容易に想像がつきます。もちろん、こうしたたった一つの工夫だけで、日本経営品質賞を受賞したとは言えませんが、土台の一つになっていると考えてよいでしょう。

 ここまで、「観る(Seeing)」ことを深く理解すえうめに、「ダウンローディング」と対比しながら、「保留」も含め詳細に紹介しました。最後に、日常生活の中で「保留」の力を高める方法を紹介しましょう。

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