9月11日のITmediaエグゼクティブ勉強会に登壇したのは、ネットイヤーグループ 代表取締役社長兼CEOの石黒氏。デジタル時代のマーケティングについての講演を行った。
石黒不二代氏が率いるネットイヤーグループは、米国で1993年から展開していた事業体をベースとし、1999年に日本企業として設立された。「Webセントリックマーケティング」を提唱、主に大企業のデジタルメディア戦略支援や、独自ソリューションや新規事業の開発に取り組んでいる。日本法人設立後に、ネットイヤーの名を日本に知らしめた最初のプロジェクトがユニクロのECサイトだったと石黒氏は振り返る。
「流行となったフリース商品をネットで販売するために構築された。当時、まだ衣料品のネット販売は珍しかった。フロント画面で商品をクリックすると、色やスタイル、サイズなどを選択でき、また在庫数が少ない商品は残り数量も分かるようになっていた。そこから商品を選択して“買い物カゴ”に入れるが、ビジュアルつきで画面下部に配置した買い物カゴは当時のユーザーにとって新鮮な体験だったと考えている。これが2000年のWebマーケティング。回線はナローバンドで、端末はPCのみ、やっていたのは“欲求を持った人を購入に至らせる”ことだけだった」(石黒氏)
それから10年以上が経過し、Webマーケティング事情は大きく変わった。販売機能だけでなく、その前段階となるブランドや商品の認知、興味、比較、検討、そして購入後の再購買、さらにはロイヤルカスタマー獲得まで、あらゆる機能が期待される。それらを一貫して提供することのできるプラットフォームの概念を「デジタルマーケティングのプラットフォーム」と呼ぶ。
「これはマーケティングないし企業活動の全てとも言える。企業が、固有のIDを持つ顧客と永続的な付き合いをするためのプラットフォームである」(石黒氏)
一方、インターネットを通じた個人からの情報発信などが影響し、社会に流通する情報の総量は加速度的に増大した。例えば総務省の「平成18年度情報流通センサス報告書」では、インターネット普及前夜である1996年から2006年までの国内さまざまな媒体を通じて流通した情報の推移が掲載されており、選択可能情報量は10年間で532倍になったとしている。とはいえ一人の人間が受け取れる情報の量には時間的な制約などから限度があり、消費可能情報量は同じ期間に33倍、情報消費量でも65倍と、その伸びには大きな格差がある。その結果、企業が発信した情報が消費者に届く割合も低下してしまう。
「消費者の嗜好も変わった。インターネット普及以前は、皆が同じモノを欲しがる傾向が強く、大きな生産能力を持つメーカーが強かった。また商品の輸送も大量一括、コミュニケーションもマスメディアが中心。この頃のマーケティングは“消費者にリーチすること”が重要だった」(石黒氏)
しかし今の消費者は、他人とは違ったモノを求め、またソーシャルメディアやブログを通じて自ら情報発信を行い、そして消費者どうし相互に繋がりを得ている。その情報量に埋もれ、従来の手法は消費者に情報をリーチさせることが難しくなってきた。企業にとっては非常に厳しい環境だ。
そこで注目されるのがビッグデータだと石黒氏は言う。サイトにアクセスしてきた際のIPアドレスやCookie、企業サイトにユーザーが登録したメールアドレスやソーシャルメディアのアカウント、さらにはソーシャルメディア上の無数の発言など、さまざまな形、内容の情報を取り入れ、活用していくことが重要だとし、それを実現するのがデジタルマーケティングプラットフォームの概念だと説明する。
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明治学院大学 経済学部准教授