重要なのは今後のITを予見する力――「New Global」を推進するNTTデータNTT DATA Innovation Conference 2013リポート(1/2 ページ)

1月25日、NTTデータが「NTT DATA Innovation Conference 2013 New Growth, New Global――日本流グローバル戦略の可能性」を都内ホテルで開催。主催者講演にNTTデータ 代表取締役社長、岩本敏男氏が登壇し、「NTTデータが挑む、グローバル経営のInnovation」をテーマに講演した。

» 2013年03月01日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]

 1月25日、NTTデータが「NTT DATA Innovation Conference 2013 New Growth, New Global――日本流グローバル戦略の可能性」を都内ホテルで開催。主催者講演にNTTデータ 代表取締役社長、岩本敏男氏が登壇し、「NTTデータが挑む、グローバル経営のInnovation」をテーマに講演した。

ITパワーを駆使して未来を予測

 「2013年に入り、賀詞交換会などで経済界の方々に会うと、何となく笑顔がこぼれている人が多い気がする。円安傾向や株価の上昇により、良い年になりそうな気配からかもしれない」と岩本氏は講演をスタートした。

NTTデータの岩本敏男社長

 「2012年は、政治的な年であった。3月にはロシアのプーチン氏が大統領に返り咲き、5月にはフランスのオランド氏がサルコジ氏を破り大統領に就任。2012年末には、環太平洋の国々、日本、米国、韓国、中国で新しいリーダーが登場した」(岩本氏)

 新しいリーダーたちは、新たな世界の枠組みの実現に向け、さまざまなディスカッションを始めている。その中で2012年11月に行われたアメリカ大統領選挙では、ITの活用が大きな話題となった。

 4年前の大統領選挙におけるオバマ氏の勝因のひとつとして、インターネットの活用が挙げられる。今回の選挙では、統計学者であるネイト・シルバー氏がITを利用した分析により、50州すべてで勝者を的中させたことが大きな話題となった。

 ネイト・シルバー氏が予測した選挙結果は313対225でオバマ氏勝利であり、実際の結果も332対206でオバマ氏勝利だった。また得票率でも予測が50.8%対47.5%でオバマ氏勝利のところ、実際の結果も50.8%対48.3%でオバマ氏勝利という高い精度だった

 この予測モデルは、CNNやウォール・ストリート・ジャーナルなどが発表した159種類の投票予測の信頼性を計算し、時系列で誤差を修正したデータと、人口統計データから16個の変数を使い、独自に予想したデータを使い、1万回のモンテカルロシミュレーションで算出された。

 「ネイト・シルバー氏は、世の中にある膨大なデータを分析し、高度な分析手法を利用して未来を予測するためにITパワーを駆使した。これにより未来予測が実務レベルに達した。自然科学における分析は、論理的な数式や方程式により導き出す。しかしこれまで困難だった社会現象の分析を可能にしたことが功績だ」(岩本氏)

 もうひとつオバマ氏勝利の要因として、Twitterのつぶやきを分析して勝者を的中させたことも挙げられる。Twitterでは、Webサイトを利用して1日につぶやかれる4億件という膨大なデータを分析。否定形のつぶやきから「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」という感情を正確に抽出する仕組みを実現した。

 この4億件のデータを処理する仕組みも、強力なコンピュータパワーがあってこそ。これにより、つぶやきを90%の精度で分析することが可能。2008年に約10カ月間の1000万ツイートをテキストマイニングで解析し、社会のムードを測定した結果、ダウ・ジョーンズの工業株価平均との相関を発見。市場動向を86.7%の精度で予測した。

New Globalへのパラダイムシフト

 ノストラダムスの予言をはじめ、過去から現在に至るまで、予測することは人類の願望だった。英国の数学者で、気象学者でもあるリチャードソンは、世界で初めて数値による天気予報を試みたが、計算ミスにより失敗に終わったという記録がある。

 「現在、コンピュータを使った天気予報はかなりの精度を実現している。人類の未来を知りたいという願望は、予言から予測に形を変えて進化している。予測のあり方をITが変えようとしているのが現状だ」(岩本氏)

 それでは、ITにより未来予測ができるようになった現在、グローバルビジネスはいかに変貌するのだろうか。またグローバルビジネスを展開するにあたり、どんなことに注意しなければならないのだろうか。

 「その前にグローバルとは何か、まずはグローバル化の歴史を振り返ってみる」と岩本氏。19世紀の大英帝国から始まったグローバリゼーションは、誰もが地球上を簡単に移動できるようになることを意味する。しかし当時、それは簡単なことではなかった。

 「シルクロードで移動するには膨大な時間が必要であり、大航海時代には相当なリスクを伴った。移動という冒険に果敢に挑むことで、人類は地球が球体(Globe)であることを実証した」(岩本氏)

 その後、大英帝国が繁栄し、蒸気機関を発明したことにより、一般人が安全かつ高速に移動することが可能になった。輸送技術の進歩には、地域を越えて展開する「Borderless」、業態を超えて統合する「Integrate」、新商品への代替えである「Replace」の3つの要因がある。

 Borderlessの事例としては、1888年にSears&Roebuckが、鉄道や郵便制度を利用して通販事業を開始。またIntegrateの事例としては、1852年にパリに世界初の百貨店であるボン・マルシェが誕生した。さらにReplaceの事例としては、1785年に英国の日刊新聞「The Times」の創刊により、それまでの社交場だったコーヒーハウスが縮小している。

 岩本氏は、「グローバリゼーションが進展すると垣根を越えたさまざまな産業の変化が起きる。現代に訪れたもう1つのグローバリゼーションが、1995年に誰もがインターネットを使えるようになったIT革命である」と話す。

 IT技術の発展で、物理的な地球のほかに、電子ネットワークが網羅されたもう1つのバーチャルな地球が登場する。これが「New Global」である。New Globalのパラダイムシフトは、人や歯車がCPUに、紙がストレージに、郵便・電話がネットワークへと進化している。

 「CPU、ストレージ、ネットワークという3大要素技術が、猛烈な勢いで進化している。1995年から現在までに、CPUは90倍、ストレージは4000倍、ネットワークは1万5000倍以上に伸びている。少なくとも、あと10年はこの状況は続くだろう。これよりクラウドやモバイル、ビッグデータが利用できるようになった」

 New Global時代には、IT技術の進化によって垣根を越えた産業変化が起きる。例えばBorderlessでは、飛行機のエンジンに取り付けられたセンサーからリアルタイムにデータを取得し、情報に基づいて適切な整備を実施することが可能。情報共有により、整備の効率化と安全性を両立できる。

 またIntegrateでは、家と車が電機と情報でつながる新しい住宅を実現。ITを中心に、住宅、自動車、家電メーカー、電力会社などが連携される。さらにReplaceでは、これまで専用機器として提供されていたカーナビの機能が、スマートフォンでも同等の機能を利用できるようになるなどの置き換えが加速する。

 岩本氏は、「発展途上のNew Globalであるが、ITの垣根を越えた産業変化が起こりつつある。重要なのは今後のITを予見する力である」と話している。

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