「デジタルという名の竜を飼いならせ!」──CIOアジェンダ 2014Gartner Column(1/3 ページ)

デジタル・テクノロジは、既存の勢力をくつがえすほどの巨大な力を持っている。うまく扱えば強力な味方になるが、敵に回すと面倒な相手である。

» 2014年07月16日 08時00分 公開
[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

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 CIOの仕事は、この10年間で目まぐるしく変化してきたと誰もが言う。経済状況の変化やテクノロジの変化は言うに及ばす、最も大きな変化の要因がマネジメントからのプレッシャーかもしれない。CIO率いるIT部門への期待が確実に変化していることを、読者の皆さまも肌身で感じているだろうか。そして、その変化に対応すべく、あなた自身や職務内容に変化が現れているだろうか。

CIOサーベイ2014について

 ガートナーCIOサーベイは、過去十数年にわたって世界中のCIOを対象に実施してきた調査で、歴史、規模、内容の全てにわたり最大級の調査である。今回の調査では、2339人のCIOに回答してもらった。そのうち、日本からの回答は84人だった。アンケート調査では、統計情報などに関するごく少数の一般的な質問もあるが、大半の質問は、ガートナーのアナリストによる仮説を検証するものとなっている。

 今回検証した仮説は以下の4つだ。第1にソーシングにおけるイノベーションについて、第2にパブリック・クラウド・ソリューションの配備について、第3にデジタル化と「チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)」のロールについて、そして第4に「従来(リニア: 線形)型」と「ノンリニア(非線形)」という2種類のITを運営する「2つの流儀」という概念についてである。

IT部門の予算について

 CIOサーベイにおいて、最初に気になる点は、IT部門の予算についてだろう。まずは、このIT部門の予算について傾向を説明したい。図1は、グローバル全体の結果であるが、2339人の全回当者のうち45%は増加したと回答し、増減無しとした回答者が38%で、減少したと回答したのが、17%であることを示している。また、平均増減率(加重平均)では0.2%程度増加したことを示している。つまり、増えたと回答したところは、大きな金額ではないが増加しており、減少したところは、大きな金額で減っていると言える。

 しかし、最も興味深い結果は、図の右サイドにある円グラフだ。IT支出がIT部門外で起こっていることが明らかになったのだ。CIOサーベイに回答したCIOによれば、IT支出の約4分の1はIT部門およびIT部門予算外で発生している。言うまでもなく、これは、あくまでもCIOが把握している数字で、IT部門外の支出額は、CIOが把握できていない部分があるのが自然と考えるならば、これより大幅に増える可能性が高い。これを国内のCIO 84人の結果で見るならば、IT部門の予算について35%が増加したと回答し、45%が増減無し、19%が減少したと回答した。IT部門外で発生しているIT支出の割合は、31%となっており、グローバルよりもこの比率が高いことが特徴である。

図1:IT部門予算の増減率

IT部門外で発生するIT予算

 今回のアンケートでは、どの部署から発生しているのかを聞いているのだが、全てが、ビジネス部門管轄か、マーケティング部門管轄という回答になった。つまりは、経理や調達などの部門は、IT部門外でのIT予算を持たない。しかし、営業、マーケティング、製品・サービス開発などのフロント・オフィス部門において独自予算を持っているということになる。

 フロント・オフィス部門が、なぜ、自身で予算を持ってIT投資するのだろうか。答えは単純であろう、「既存のIT部門は、フロント・オフィス部門から見てアテにならない」からである。こう書くと、「フロント・オフィスの連中が勝手にやっているだけで、IT部門は迷惑しているのだ」という声が聞こえるようであるが、果たして、企業のトップは、そんな風に言うだろうか。「既存のIT部門がフロント・オフィスに耳を傾けて支援してやってくれれば良いのだが」と嘆きの声も、私には聞こえてくるのだが、気のせいだろうか。

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