連載
» 2015年01月19日 08時00分 公開

視点:日本発のグローバルブランドを増やそう (2/3)

[福田 稔(ローランド・ベルガー),ITmedia]

2.ブランドの鮮度を維持する仕組みを持つ

 ブランドの鮮度や創造性を維持するための組織としての仕組みを持つことは、長期的にブランドエクイティを維持する上で非常に重要である。例えば、ファッションのラグジュアリーブランドにおいては、デザイナーの交代という形でブランドの創造性や鮮度が担保される。どんなに優れた才能を持つデザイナーであっても、属人的なスキルのみでブランドの鮮度を維持し続けるのは至難の業だ。昨年ルイ・ヴィトンのデザイナーがマーク・ジェイコブスからニコラ・ゲスキエールに16年振りに交代したのはみなさまの記憶にも新しいところだろう。

 ところで、ファッション業界やレストラン業界のように、デザイナーやシェフに権限が集中している業界はよい。デザイナーやシェフの入れ替えが商慣習となっており、それによるブランドの創造性維持や再生が比較的行いやすいからだ。ところが、化粧品、自動車、アルコール飲料、ホテル、サービスのような業界では、同じようにブランドが重要となるにも関わらず、組織としての取り組みが必要となるため、鮮度や創造性の維持がより難しい。例えば、これらの業界では一旦ブランド陳腐化のバッドサイクルに入り始めると抜け出すのは簡単ではないが、これは人だけでなく、組織や業務プロセスなども含め問題が組織全体に広がっているからだ。

 以前変革のお手伝いをしたある日系ホテルは、1980年代は人気があり高いブランド力を保持していた。しかしながら、ブランドの鮮度維持を怠った結果、上客である富裕層やパワーエリートの客数が落ち込み、一方で稼働率を維持すべく団体客や外国人観光客に対する営業に力を入れた。結果、ロビーは団体客で常に混雑し雰囲気がせわしないものとなり、上客は益々遠ざかってしまった。更に、団体客の獲得には値引きが必要となるため利益が薄く、正に貧乏暇なし状態に陥ってしまっていた。加えて、既存顧客を軽視したホテルの姿勢は、悪い評判を呼びブランドイメージの毀損に拍車をかけた。このホテルのそもそもの問題は、インフラに対する投資を怠たりハード面で外資系ホテルに見劣りしていたこと、インテリアや装飾デザインの外注先を一度も見直さなかったこと、従業員教育が画一的で現場が自律的に考えサービスを行える状態になかったこと等により、結果としてブランドの鮮度維持ができなかったことにあるのだが、自社のブランドに対する課題認識が甘く、営業主導で安易に売上を追ってしまったことがブランドを毀損する負のスパイラルを作ってしまった。

 このようにならないためにも、ブランドの鮮度、創造性を維持し陳腐化を未然に防ぐための組織的な取り組みやプロセスの開発が重要なる。世界レストランランキングで5年連続1位を獲得した伝説的なレストラン、エルブリのオーナーシェフ、フェラン・アドリアは次のように述べている。「1〜3年であれば才能に頼ったイノベーションが可能だが、5年、10年となるとそうはいかない。効率的なプロセスや組織といった仕組みによる鮮度の担保が重要となる」。このように、天才シェフのフェラン・アドリア、世界最高のラグジュアリーレストラン エルブリでさえも組織的なブランド鮮度の維持を推奨している。図Cで示すエルブリの組織的なR&Dとイノベーション創出のプロセスや、3Mの15%カルチャー(技術者が労働時間の15%を費やして好きな研究に取り組むことが認められる)や11番目の戒律(管理職は簡単に部下のアイデアを否定することが出来ないというもの)といった取り組みは、ブランドの鮮度や創造性維持の仕組みとして大いに参考となる。

図C

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