ラストワンマイルの配送では、ドローンの実用化が着実に進みつつある。 その最先端を進んでいるのはAmazonだ。顧客が注文した商品を30分以内に届けることを目標に、ドローン配送システム“Amazon Prime Air” の実用化に向けたテスト飛行を各国にて実施している。
世界最大の物流会社であるDHLは、ドローンを離島への緊急輸送手段として活用することを計画している。 同社開発のドローン“Parcelcopter”は、約 45分間の連続飛行が可能であり、2014年より北海沿岸のユイスト島へのテスト輸送を開始した。 当面は欧州の離島を主対象に輸送先の拡大を図る予定である。
ドローンの活用は、ラストワンマイルだけに限られるものではない。構内輸送や設備検査のツールとしての活用を検討している企業もある。 例えば、大手プラントエンジニアリング会社の千代田化工建設は、ドローンを活用した資材管理に取り組んでいる。 大型のプラント建設では、広大な敷地に置かれた 100万点以上の資材を管理するために 300人程度の人員を投入しているが、各資材に取り付けたICタグをドローンでチェックするようにすれば、同人員数を3分の1程度に圧縮できるからだ。千代田化工建設のような在庫管理でのドローンの活用は、今後増えていくだろう。
世界最大級のエンジンメーカーであるRolls-Royceは、ドローン船の開発・ 実用化に取り組んでいる。 陸上に設置した集中制御室で複数の輸送船を制御・操舵することを想定しており、トラックの自動運転と同様、最終的には乗組員を不要化できる。 加えて、乗組員の居住スペースが要らなくなることでの燃費効率の向上、積載スペースの拡大も期待できる。 昨今問題となっている、海賊の襲撃により乗組員が危険に晒されるリスクもなくなる。 法制度や保険制度の整備が必要であることは言を俟たないが、トラックの自動運転以上のインパクトをもたらす可能性もあるといえよう。
1970年代、日本においても自動倉庫や自動仕分といった物流機器が普及し、メーカーの在庫拠点を中心に荷役の自動化が進んだ。しかしながら、その普及の範囲は限定的だったといわざるを得ない。対象とする荷物の形状や特性に即した専用のシステムとなるがゆえに、多種多様な荷主の荷物を取り扱う営業倉庫では活用が難しかったからである。
倉庫ロボットの登場は、この荷役作業における自動化の範囲を飛躍的に拡大するものといえる。 なぜなら、現在“人” が対応している作業をそのまま機械に置き換えることが可能だからだ。
Amazonは、2012年にロボットメーカーの Kiva Systemsを買収し、ピッキングプロセスの抜本的自動化を進めている。 同社の倉庫ロボット“Kiva” は、掃除ロボットを少し大きくしたような形状であり、保管棚の下に入り込むことで、出荷する商品を保管棚ごと持ってくることができる。
Amazonでは、ピッキングの作業員を1日に 20km以上も歩かせる労働環境が問題になっていたが、“Kiva” を導入した物流センターでは“作業員の歩行”が不要となった。“Kiva”は、既に1万5千台以上が導入され、各物流センターの労働生産性を大幅に高めることに成功している。Amazonは、保管棚から商品を取り出すことのできるピッキングロボットの開発も進めており、“人の介在” を必要とするプロセスは尚一層少なくなると目される。
日立製作所は、Amazonの“ Kiva”と同等の機能を有する無人搬送車“Racrew”を 2014年に開発した。“Racrew”は、日立物流の物流センターに導入されており、ピッキングプロセスの省人化に寄与している。 2015年には、商品の取り出しから梱包までのプロセスに対応した自律移動型双腕ロボットを公開するなど、Amazonと伍する技術革新がなされつつある。
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明治学院大学 経済学部准教授