「先が見えない世の中」とは言われるが、パソコンもデータ分析も発達していない時代に、過去や経験に学ぶことで、時代を切り開いてきた人がいる。竹中平蔵先生が考える今学ぶべき歴史と名言とは。
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「先が見えない世の中」とは言われるが、パソコンもデータ分析も発達していない時代に、過去や経験に学ぶことで、時代を切り開いてきた人がいる。『不安な未来を生き抜く知恵は、歴史名言が教えてくれる』(SBクリエイティブ刊)では、今学ぶべき歴史と名言について話した。
私が若い頃によく耳にし、折に触れて取り出す言葉があります。
「川を上れ、海を渡れ!」です。
「川を上れ」というのは、歴史を遡って学べ、という意味です。歴史を追い、学ぶことで、社会はどんなふうに動くのか、そのとき人間はどんなふうに行動するのか、その本質が見えてくるようになります。「海を渡れ」というのは、海外の事例や経験を学び、生かそう、ということです。
社会のグローバル化が叫ばれて久しい現在の日本では、どちらかというと「海を渡れ」というメッセージのほうが分かりやすく響くかもしれません。
一方の、「川を上れ」、つまり歴史に学ぶことは、今の日本で根本的に欠けているように感じます。その最大の問題は、日本の教育では本当の意味で「歴史」を学んでいないからだといえます。
もちろん、われわれは日本史や世界史を義務教育で学び、大学受験では文系の多くの学生が非常に細かい史実まで答えることができます。
しかし、そこで学んでいることのほとんどが、「何年に何があった」という出来事と年号だけであり、その背景にある経緯やロジックを学んでいるわけではないのです。
アメリカの中学校の歴史の教科書を見た時、日本の歴史の教科書に比べて、4倍はあろうかというほど分厚かったのに驚きました。例えば「十字軍が登場した」という史実でも、なぜ十字軍が当時のヨーロッパに生まれたのか、なぜヨーロッパの勢力が急速に拡大したのか、そして十字軍はヨーロッパをどのように変えたのか、そうした歴史的要因が詳しく解説されています。
それに対して日本では、「鎌倉幕府ができた」という出来事と年号は、「いい国作ろう鎌倉幕府(1192年。なお、現在は1185年が定説になっています)」などと誰もが暗記しますが、それ以上のことを学んだ記憶がないという方も、多いのではないでしょうか?
しかし、歴史を学ぶということの本当の意味は、社会が動くメカニズム、すなわちある出来事がどんな背景や理由で生じ、それが人間社会にどんな作用をもたらしたのか、というロジックを学ぶことにあります。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授