なぜ一流の人は歴史を学ぶのか――名言に学ぶ「見通す力」の作り方ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/3 ページ)

» 2016年03月03日 08時08分 公開
[ITmedia]
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歴史を学ぶことと、経験から学ぶことの違い

 歴史というと、もう終わってしまった過去のことで、変化の激しい今の時代の問題解決には役に立たない……と感じるかもしれません。

 では今のことだけ知っていれば、未来が見通せるのでしょうか。

 皆が変化の激しさについていけないと嘆く時代には、未来を見通す洞察力がリーダーには必要になります。真の洞察力は、社会全体がどのようなメカニズムで動いているのかを考え抜き、見極めていなければ、身につかないものです。

 それを学べるのが歴史です。現在のわれわれの問題解決の助けとなり、さらに未来を考察するための教訓が、歴史の中にあるのです。

 ちなみに、歴史を学ぶことは、経験から学ぶということと根本的に違っています。

 「愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。

 経験はある特定の出来事によるものですが、歴史というのはもっと大きな流れの中から出てきたものです。そこには、われわれが未来を考察するための、たくさんの素材が埋まっています。歴史を追うことで、社会が変化するときに、それがなぜ起きたのかという要因が見えてくるはずです。

 例えば、江戸時代を通して次第に商品経済が浸透してくる中、黒船が来航し幕末の志士と呼ばれる人たちが時代の変革を担いました。そして、江戸から明治へと時代が変わり、経済についても国の体制についても、大きな変化を遂げるのは皆さんがご存知の通りです。最近では、郵政民営化を成し遂げた小泉純一郎元首相も、時代を変えたリーダーのひとりといえるでしょう。

 そうした組み合わせを考えながら歴史を紐解くことで、変化の流れが見え、歴史が面白く読めるはずです。

過去を思い起こしえないものは、過去を繰り返すように運命づけられている

 ここで1つ、ジョージ・サンタヤナ名言を紹介します。

 ジョージ・サンタヤナは、19世紀スペインに生まれ、20世紀半ばまで活躍したアメリカの哲学者であり詩人です。9歳の時にアメリカに移住し、後にハーバード大学の教授となります。そして晩年は、イタリアなどで過ごしたといわれています。

 今回のこの言葉は、過去の経験から学ばねばならないという、一見当たり前の内容のように見えますが、ヘーゲルを深く研究したサンタヤナの言葉ですから、やはり重みがあります。ヘーゲルの弁証法によれば、一定のテーゼに対するアンチ・テーゼが必ず現われ、それとの拮抗の中で歴史がダイナミックに展開されていくのです。

 例えば、江戸時代の日本は鎖国政策をとっていました。これがテーゼです。しかし世界の状況は変化し、開国・近代化の波(アンチ・テーゼ)が押しよせます。その象徴が黒船でした。そうした中で混乱が起こり、明治維新による新しい政治が定着しました。しかし時代とともに、それに対する別のアンチテーゼ(例えば民主化など)が現われてくるのです。

 冒頭でも触れましたが、若い頃、よく「川を上れ、海を渡れ」という言葉を耳にしました。歴史を遡って教訓を得ることは極めて重要です。また、われわれが直面しているような問題は多かれ少なかれ他の国でも経験しているでしょうから、諸外国の事例を調べて学ぶことも極めて重要です。過去の事例に学ぶことを、この名言では強調しています。

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