インターネットサービスだからこそ実現できる、より本質的な価値の提供、独自システムによる細やかなサービス経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(1/2 ページ)

どうやったら世の中に新たな「あたりまえ」を提供できるのか、利用し続けてもらえるのかを常に考え、顧客満足度を高める取り組みを行っている。

» 2017年01月18日 07時18分 公開

 早稲田大学1年次の2006年にリブセンスを創業した村上太一氏。その後2011年12月に東証マザーズ上場を果たし、2012年10月には東証一部へ市場変更。「あたりまえを、発明しよう。」をビジョンに掲げ、「ジョブセンス」「転職会議」など数々のインターネットサービスを立ち上げてきた。新たな事業の創出の根本にはどのような価値観やビジョンがあるのか、多くのユーザーを抱えるインターネットサービスの運営において、顧客満足度を高めるという観点でどのような取り組みを行っているのかについて話を聞いた。

成功報酬型の求人サービスで、アルバイト求人にまつわる世の中の不便を解決する

井上 「リブセンス」という社名は、「生きる意味」という言葉に由来しているそうですね。どのような価値観に基づいて、数々のサービスを手掛けてきたのですか。

リブセンス 代表取締役社長 村上太一氏

村上 私たちは、根幹となる価値観・行動目的を「幸せから生まれる幸せ」という理念に定めています。幸せの価値観は人によってさまざまですが、私は周りの人の喜びを生み出すことだと考えています。リブセンスにとっての「生きる意味」は、社会に幸せを生み出すことなんです。

 その理念のもと、「あたりまえを、発明しよう。」というコーポレートビジョンを掲げています。誰もが使ってくれて、世の中の「あたりまえ」となる価値あるサービスやプロダクトを作りたいです。どうやったら世の中に新たな「あたりまえ」を提供できるのか、利用し続けてもらえるのか、ということを常に考えています。

井上 現在展開されている主要サービスの内容について教えてください。

村上 創業時から展開しているのが「ジョブセンス」というアルバイト求人サービスです。「ジョブセンス」のサービスの特徴は、掲載費は無料で、採用できて初めて費用が発生するという成功報酬型であることと、「ジョブセンス」を通じて採用が決まった方にお祝い金をプレゼントしていることです。

井上 採用で課金する料金体系の求人広告は、業界で初めてのことだったと思います。どういった考えで「ジョブセンス」を立ち上げたのですか。

村上 高校生のときに経験したことですが、街なかにはアルバイト募集の張り紙が20件30件とたくさんあるのに、インターネットでアルバイト求人の検索をすると、2、3件ほどしか掲載がありませんでした。

 大手の求人サイトは掲載課金型のため、採用できなくても出稿するだけで費用がかかってしまいます。当時のアルバイト求人業界ではそれ以外のビジネスモデルがなく、インターネット上でアルバイト求人を出す企業はまだまだ少数でした。求職者や企業にとって就職・採用はとても重要なことにもかかわらず、求職者は十分な求人情報を集める手段がなく、企業はよい人材に求人情報を知ってもらえず、適切なマッチングができていないように感じました。

 そこで、成功報酬型のビジネスモデルに変えれば、企業側からの掲載数は増え、求職者もより多くの情報から理想の職場を見つけることができるようになるのではと着想しました。働く側と採用する側、双方の不便を解決できるという考えのもと「ジョブセンス」を立ち上げ、同様のビジネスモデルで、正社員向けの「ジョブセンスリンク」というサービスも展開しています。

インターネットならではの新たなビジネスモデルを構築する

井上 既存のサービスにはない新たなモデルを作り出すことで、利用するすべての人に利点が生まれるんですね。最後に、今後の展望を「転職会議」というクチコミサイトも運営しているそうですね。どういったサービスですか。

村上 「転職会議」は、社員や元社員が実際の体験談や制度などを投稿する企業クチコミサイトです。転職の際、企業側からの求人情報だけではなく、実際に働いた人の生の声を提供することで、よりよいマッチングにつながるのではないかと考え、立ち上げました。

 1年半前には、新卒の就職活動向けに「就活会議」というクチコミサイトも立ち上げ、現在では、就活生の約4人に1人が登録するサイトに成長しました。「就活会議」では、働いている人のクチコミの他、エントリーシートの質問内容や選考状況など就活のリアルな情報を可視化し、企業と就活生が持つ情報にギャップがなくなることを目指し、サービスを運営しています。

 このほかにも、不動産関係では賃貸情報サイトの「DOOR賃貸」、中古不動産価格査定サイトの「IESHIL」というサービスを展開しており、現在9つのサービスを運営しています。

井上 他の企業ではなく、リブセンスがそれらのサービスを展開する意義について教えてください。

村上 既存のプレイヤーがそれまでのやり方や常識にとらわれてできなかったことを、私たちがやろうと考えています。

 例えば、求人広告の場合、既存プレイヤーは紙媒体と同じビジネスモデルを踏襲したため、インターネットの求人広告にも掲載費を課しました。ですが、紙からインターネットにシフトしたことで、印刷等のコストが抑えられるので、掲載費は無料にした成功報酬型が導入できるはずなのです。

 既存のプレイヤーが従来のビジネスモデルを変えることは容易ではありませんが、私たちは、それらに疑問を投げかけ、より市場にフィットする価値を追求し、インターネットならではの新たなビジネスモデルを作り出していきたいです。

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