あまのじゃくでひねくれてみよう。「当然こうだろうな」という考えを疑ってみることで見えてくるものがある。
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私の職業は哲学者です。そういって自己紹介すると、たいていは「へー変わってますね」とか、「どうして哲学なんか始めようと思ったんですか」と聞かれます。もちろんそこにはいろいろ理由があるわけですが、きかっけは別にして一言でいうと、「あまのじゃく」だからだと思います。
あまのじゃくというのは、つまりひねくれているということです。私は子どものころからずっとひねくれていました。大学生になっても、社会人になっても。最初は商社マンだったのですが、普通の会社でひねくれていると、変わり者扱いされます。市役所でも働いていたことがありますが、やはりひねくれていたので、入庁当時はよく上司とぶつかったものです。
そんな中で哲学に出会い、ハッとしたのを覚えています。哲学は物事の本質を探究する学問なのですが、そのためにはまず「当然こうだろうな」という考えを疑ってみなければなりません。そうでないと本当の姿など見えないからです。ということは、あまのじゃくでひねくれてみないといけないということです。
これを知って、まさに天職だと思いました。ひねくれることが求められるなんて! では、ひねくれるとは具体的にどういうふうにすればいいのか? それが逆に考えるということなのです。
教師が円を描きなさいといえば、三角を描く。上司がいい企画だといえば、よくないと考える。政府が正しいといえば、間違っていると考える。逆に考えるということは、そういうことです。すごく単純なことなのですが、これが意外とできません。
なぜなら、私たちは子どものころから素直に考えるように訓練され続けているからです。そこを逆に考えるというのは、かなりの勇気と発想の転換が求められます。でも、人間なんでも訓練すればできるようになるものです。哲学という学問はそのための訓練のような部分があります。
私も哲学を始めてみて知ったのですが、逆に考えるための概念ツールがたくさんあるのです。例えばヘーゲルの弁事証法というのは、簡単にいうと、反対の事柄を切り捨てずに、プラスに考えてみるという概念です。つまり、普通はマイナスとして切り捨てるものを、あえてプラスになるように転換してみるのです。しかも、それによって物事をより発展させることが可能になります。
最近話題になったゲーム「ポケモンGO」を見れば分かると思います。あれは子どもが外で遊ばなくなるというゲームのマイナス点を、プラスに変えることで見事外で遊ぶツールに発展させたものです。
あるいは、レヴィ=ストロースの構造主義。これも簡単に言うと、目先の現象にとらわれずに、全体構造に目を向けましょうという発想です。そうすることで、本質が見えてきます。木を見て森を見ずではなく、森も見てください。普通は目の前の現象に目がいきがちですから、これもまた逆に考えた結果といえるでしょう。
こうした例からも分かるように、逆に考えると、物事を発展させることができたり、本質が見えたりするのです。これが逆に考えることのメリットです。もっと具体的にいうと、それによってより善く生きることができるのです。
誰しも楽なほうに流されたり、長いものに巻かれて生きようとするものです。
ただ、そうすると、みんな同じ方向に進んでいるので、分け前もみんなで等分することになります。もしこのとき、1人だけ違う方向に進んでいれば、見つけた宝物は自分だけのものになります。投資の世界でいう「逆張り」ですね。
これはどんな物事にも当てはまるります。ビジネスもそうでしょう。みんなと同じことをやっていては儲かりません。だから逆に考え、逆のことをやる必要があるのです。人生も同じです。みんなと同じことをしていては得をすることはありません。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授