自動車産業で今後起こるDisruptiveな革新とシンガポールのポテンシャル――モビリティ・自動運転・デジタル化・EVの潮流飛躍(2/4 ページ)

» 2017年07月10日 07時00分 公開

2. Automotive Disruption Radarによる、革新可能性の定点観測

▼2.1 Automotive Disruption Radar調査の概要

 4つのメガトレンドMADEを背景とした、自動車業界におけるDisruptiveな革新はいつどのように生じるのか。

 不確実性が高い中、ローランド・ベルガーは主要な指標をグローバル主要国で定点観測し、革新の兆候を先んじてとらえる取り組みを始めた。観測に用いたのは5分野にまたがる主要な25の指標を同心円状に配置したDisruption Radar(図表2)であり、各指標を5点満点で評価して中心から獲得した点数分を塗りつぶす。各国において塗りつぶされた面積が広いほど、変革への取り組みが進んでいることが確認できるチャートである。

 5つの分野においては、以下の調査項目を設定した。

 ・消費者の関心:新しいモビリティサービスや自動運転・デジタル・EVなどの新しいトレンドへの受容性・関心があるか、どのくらい新しいモビリティサービスを活用しているか、どのくらいEV/PHEVが売れているかなど

 ・規制:自動運転車に関する規制の整備動向、環境関連規制の動向、自動車業界団体の規制への働きかけの状況など

 ・技術:自動運転車の技術開発レベル、特許動向、EVバッテリーコスト、自動運転や人工知能への投資動向など

 ・インフラ:5Gカバレッジ、EVチャージングポイントの整備動向、車車間通信の普及動向、自動運転向けの実証実験道路の整備動向など

 ・自動車業界の動き:自動運転車の開発動向やその技術への投資動向、販売モデルのうちEVが占めるシェア、オンライン・デジタル販売チャネルの整備動向、シェアード車両の台数など

 調査にあたっては、10カ国(米国、中国、ドイツ、フランス、オランダ、英国、韓国、日本、インド、シンガポール)において1万人以上の消費者にアンケートを実施した。また、政府機関や業界団体、OEMなど、主要な関係者へのインタビューも実施している。調査は今後も四半期ごとに実施し、Disruptiveな革新の兆候をシステマティックに把握できる仕組みを整えている。

▼2.2 Automotive Disruption Radar調査結果

▼2.2.1 主要10カ国におけるAutomotive Disruptionの総合評価

 第1回調査の結果、調査対象国の中でも、特にオランダ、シンガポール、中国においてDisruptiveな変化が後押しされていることが判明した。

 オランダは国として自動運転技術開発を支援しており、そのための規制整備が進んでいるほか、EV普及率が高く、EVチャージングポイントも国土を網羅している。シンガポールはUberやGrabのようなシェアードサービスの普及、新規技術に対する政府の支援が存在する。また、中国もDidiなどのシェアードサービスが普及している。

 さらに3カ国に共通するのは、自動車業界における新たなメガトレンドMADEに対する消費者の高い受容性である。

 なお、日本は規制整備の遅れや低いEV普及率、ライドシェアなどのシェアードサービスが普及していないことなどが影響し、10カ国中で最も変化の兆候が弱いという結果が出ている。

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