連載
» 2018年07月30日 08時26分 公開

視点:日本企業に必要な「自発的変革力」 (2/3)

[渡部 高士(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger

 個社別の詳細な分析を行う必要はあるものの、総じて国内大手上場企業は、成長に苦慮する中で市況に恵まれたことにより、表面的な業績(営業利益)が拡大したに過ぎず、持続的な成長基調へと転換するためには、これまでとは異なるアプローチが必要なことを示唆している。

成熟化するポートフォリオ

 バブル崩壊からリーマンショック後まで、日本国内においては未曽有の長期的な経済の低迷を体験し、デフレへの対応を含め、国内企業は生き残りに向けて大きな構造改革に迫られてきた。また、その中で構造改革に失敗した企業による経営破綻、さらにはそれに伴う企業の合従連衡が行われてきた。

 こういった環境下において、国内企業は不採算事業の売却、停止を余儀なくされ、短期的な収益の確保を優先せざるを得なくなった。結果として、未来の成長の種であった有望な事業や次の世代をけん引する製品に対して十分な投資を行ってこれなかった。

 そのため、各社の事業ポートフォリオを見ると、足元、成熟した稼ぎ頭(キャッシュカウ)は存在するものの、結果的にはその成熟化が進んでしまっているのが現状といえる。(図D参照)

依然として根強い自前主義

 一方で、日本企業として、新規領域に踏み出すときにも、自社の技術へのこだわりが強く、他企業との連携、もしくは買収を活用した展開は依然として限定的である。新規事業への展開を考える際にも、伸びる市場に買収を活用しながら大きく事業構造を転換する企業は極めてまれであり、既存のコア技術を援用することにより事業領域の転換を目指し、その技術上の限界からなかなか事業化が進まない傾向にある。富士フイルムの化粧品領域への転換においては、写真フィルム事業で培ったコラーゲンやナノ化技術を転用した成功事例はあまりに有名であるが、この事例が多くの経営陣によって語られ続けるのも、背景にこういった根強い自前主義が存在するように考えられる。

持続的成長を見込みにくい日本企業

 結果として、日本企業においては、近年変化が見られ始めてはいるものの、自社の成長を担保するために事業ポートフォリオを入れ替え続けていく、GE型の事業運営はあまり根付かず、大きな事業転換が進みにくくなっている。また、オープンイノベーションにおいても、ドイツのように産業クラスターをつくりあげるような大掛かりな取り組みが存在しない中で、自社の技術による事業化が前提となり、成功事例が生まれにくい状況である。

 例えば、もともと港湾として栄えていたドイツのハンブルグ市では、新たな産業として航空機産業に着目し、エアバス、ルフトハンザと協力しハンブルグ空港を中心に大学・研究施設や、数百を超えるサプライヤーを集積した。世界から最先端の研究を集約し、事業化するとともに、研究開発人材の育成に企業が連携しながら行っていく仕組みを構築している。このようにグローバルには一般的になりつつあるオープンイノベーションを新規事業創出に活用できていないのも自前主義によるところが大きい。現状のままだと、国内企業の競争力は、近い未来事業のさらなる成熟化により低迷する可能性が高く、事業環境に恵まれている今こそ、将来に向けた布石を打っておく必要がある。

2、新たな成長基調に転換するためには何が必要か

未来からの逆算での中長期戦略

 外部からの圧力ではなく自律的に自社を変革し、持続的な成長へと大きく舵(かじ)を切るためには何が必要か。それは、自らがどのように未来、社会を描き、それにどのように備えていくかにヒントがある。このアプローチは、現状の事業からボトムアップで描く目指す姿では大きなジャンプが描きにくい中で、未来から逆算することにより大きな目線で描くことができる。

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