これからはキャリアは短いけれど、長い期間働くことを意識しなければならないだろう。そのためにはどのような心掛けが必要だろうか。
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社会人経験が豊富になっていくと、若手からキャリアの相談をされる機会が増えていくでしょう。エグゼクティブの方であれば、なおさら有効なアドバイスが期待されるでしょう。
そこでの相談内容はさまざまですし、相談に対するアドバイスもさまざまです。しかし、そのアドバイスのベースになるスタンスは、2つに分かれるように見えます。「生き残り」陣営と「幸福」陣営です。
技術革新のスピードが早くなっていき、仕事の内容が変わったり、仕事が無くなったりすることが予測されています。ゆえに、一つのキャリアが短くなっていくといわれています。一方で、寿命が長くなっていきますので、働く期間が長くなることが前提になっていくでしょう。一つのキャリアは短いけれど、長い期間働くことを私たちは意識しなければいけません。だから、ちゃんと「生き残る」ことが大事であることが分かります。
しかしながら、「生き残る」ことだけでは、何のために生きているのか分かりません。私たちは「幸福」を味わいたいと思っています。
働く時間以外で「幸福」を味わうことも大切ですが、働いている時間でも「幸福」を味わうことができれば、人生の満足感は高まります。また、「幸福」と感じることなく働くことは、単に不幸になるというだけではなく、健康を損なうことにつながります。ゆえに、アドバイスのベースを「幸福」に置いている人もたくさんいます。
子供に対する教育方針を見ても、多くの親が「生き残る」ことと「幸福になる」ことを意識しているように見えます。「生き残ってほしい」という思いから、幼稚園のときから英語の塾に行かせ、小学校の高学年のときから進学塾に行かせ、いわゆるいい中学、高校、大学に行かせようとしている親がいます。一方で、「幸せになってほしい」という思いで、受験になるべく巻き込まれないように、のびのびとした学生生活が送れるように、自分らしく生きられるようにしている親がいます。
「生き残り」と「幸福」。ときに相反します。
「生き残り」とは、外部環境に適応することです。環境が変われば、それに合わせて自分を変えていくことが必要です。他の人との競争に勝たないといけません。生き残るために将来のリスクを勘案して、準備が必要です。今日の快楽を我慢して、明日の不安に向けての準備が必要です。どちらかというと、ネガティブな感情が支配しています。
一方で、外の環境に合わせてばかりいては「幸福」にはなれません。「幸福」の感情は、過去を振り返っての満足、現在の充実、未来への希望のように、ポジティブな感情で満たされていることが一般的です。自分らしく、リラックスし、時間に追われずゆったり、優しさに包まれていると形容されますし、他者との関係性も競争ではなく、協調であり、分かり合えるということになります(図1参照)。
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明治学院大学 経済学部准教授