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» 2019年10月15日 07時05分 公開

自社と市場の現在地を把握する既知とアイデアの組み合わせで市場を変えろ(2/2 ページ)

[永井俊輔,ITmedia]
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3タイプの企業がそれぞれの方法で右上を目指している

 現在地と目的地を把握したら、次に目的地までの道のりを考えてみましょう。図1で確認したように、市場には3タイプのプレーヤーがいます。

 1つ目は、左上に登場するディスラプターです。彼らは新市場を作ることが得意です。

 2つ目は、右下に登場する大手企業です。彼らは生産性の高さが武器で、安定性、収益性に優れています。

 3つ目は、左下で足踏みしているレガシー企業です。現状、市場の成長が見込めず、生産性も低いレベルにとどまっています。

 市場競争のルールはシンプルで、先に右上のエリアに到達した会社が勝ちです。

 ディスラプターの勝ちパターンとしては、iPhoneを作ったアップルが好例といえるでしょう。UberやAirbnbなどもこのパターンですし、ビジネスモデルとしては、コンビニやネットショップが例として挙げられます。

 大手企業の勝ちパターンとしては、ポケモンGOを開発した任天堂が良い例といえます。ファッションアイテムの衣類に防寒などの機能を加えたユニクロもこのパターンです。

 いずれのパターンも図1で見ると左上から右上、または右下から右上に移動するだけですので、簡単に見えるかもしれません。しかし、当然ながらそこには障壁があります。

ディスラプターと大手、それぞれの障壁

 まず左上から右上を目指すディスラプターの障壁は、成功確率が著しく低いことです。ディスラプターはほとんどがベンチャー企業で、売り上げゼロの状態からスタートします。そのため、素晴らしいアイデアや技術を持っていたとしても、それを事業化するまでの運転資金に困り、潰れてしまうことが多いのです。

 上場や高いバリュエーション(企業価値評価)で会社を売却することをゴールとして考えると、そこまでたどり着ける確率は「1000のうち3」、つまり0.3%ともいわれます。私は前職が投資ファンドで、いまはエンジェル投資家としても活動しているため、そのあたりの事情をよく見ています。ウーバーのように成功する会社もありますが、その背景では何百倍も数の会社が潰れているのです。

図2:スタートアップ、LMI、レガシーの成長曲線

 右下から右上を目指す大手企業の場合は、発想が保守的になり、実行する際に腰が重くなるという障壁があります。右下にいる会社はすでに安定経営できていますので、わざわざリスクをとって新しいことに挑戦する意欲が低くなりがちです。社内で「変人」といわれるような人が革新的なアイデアを提案しても、大手企業には安定感を求めて入社してくる人が多いため、保守的な考えや社風が向かい風となり、立ち消えになってしまうことがあるのです。

レガシー企業の優位性を認識

 では、左下から右上を目指すレガシー企業はどうでしょうか。

図1で見る限り、レガシー企業は右上までの距離がもっとも遠く、分が悪いように見えます。しかし、そこが盲点です。縦軸の移動を考えてみると、市場の成長性を高めるアイデアは誰かが見つけなければなりませんが、その点さえクリアできれば、大手企業よりフットワークが軽く挑戦できます。

 横軸の移動に関しても、レガシー企業は既存の事業がありますので、安定的に収益を確保しながらイノベーションの事業化に取り組むことができます。また、レガシー企業は大手と比べてデジタル化が遅れている会社がほとんどですから、ITやAIなどを積極的に取り入れていけば、短期で効率よく生産性を高めることもできます。

 つまり、図1上ではもっとも目的地から遠いように見えるレガシー企業は、ディスラプターと大手企業それぞれに対して半歩ずつリードしているということです。

 発想力を磨けば上に移動できます。効率化に取り組めば右に移動できます。すると、力学の要領で左下から右上に移動する道が浮かび上がってきます。この道のりがLMIです。

 では、上と右に移動するには具体的に何をすれば良いのでしょうか。次回は右に移動するための方法を紹介します。

著者プロフィール:永井 俊輔(ながい しゅんすけ)

クレストホールディングス 代表取締役社長。1986年群馬県生まれ。早稲田大学卒。株式会社ジャフコでM&Aやバイアウトに携わった後父親が経営する株式会社クレストに入社。CRM(顧客関係管理)やマーケティングオートメーションを活用して4年間で売り上げを2倍に拡大し、クレストをサイン&ディスプレイ業界の大手企業に成長させる。2016年に代表取締役社長に就任。ショーウィンドウやディスプレイをWeb同様に正しく効果検証するリアル店舗解析ツール「エサシー」を開発するなど、リアル店舗とデータサイエンスの融合を目指す。成熟産業にITやテクノロジーを組み合わせ、新たな価値を生み出すLMI(レガシーマーケット・イノベーション)に尽力。


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