効率化とイノベーションの組み合わせで勝つ。LMI実現に向けた流れを把握する。
こんにちは、永井俊輔です。クレストHDの代表取締役を務めています。
クレストHDは看板(サイン&ディスプレイ)事業など複数の事業を手掛けるとともに、伝統と歴史を持つ業界が既存の市場(レガシーマーケット)を刷新する支援をしています。
この取り組みを、われわれはレガシーマーケット・イノベーション(LMI)と読んでいます。
前回はレガシー企業(レガシーマーケット内の企業)がLMIに取り組む必要性について書きました。2回目となる今回は、LMIの実現に向けた道のりとゴールについて書きます。
まずは出発点となる現在地を把握するために、次の図1を見てください。
図1の縦軸は「市場成長性」、横軸は「生産性」を表しています。レガシー企業は左下に位置し、現状として成長性が低く、生産性も低い状態が続いています。
LMIは、図1の左下(現在地)から右上を目指すための活動です。目的地である右上は、左下とは対照的に、市場の成長性が高く、市場内で活動する企業の生産性も高いエリアです。
最近のベンチャー企業の成功例ともいえるUberやAirbnbなどは、新たな技術で新たな市場を作り出し、右上に存在しています。
国内企業の例としては、名刺管理サービスのSansan、ビジネス用チャットのChatwork、ネット印刷のラクスルなども、このエリアにいる会社といえるでしょう。ただし、彼らはいきなりこの理想的なエリアに登場したわけではありません。彼らはまず、成長性が見込める新たな市場を作り出すことによって左上に登場しました。その後、収益性を高めて右上へと移動したのです。
UberやAirbnbのような企業が左上に登場するということは、過去にない新たな市場が生まれるということです。ベンチャー企業が市場を作り出すこともありますし、新たな技術やビジネスモデルとともに新たな市場が生まれることもあります。
いずれにしても、レガシー企業側は、自分たちが収益を得ていた既存の市場が壊されたり、消されたりするリスクが高まります。
Uberの登場によってタクシー業界がダメージを受けたり、デジタルカメラの技術がフィルムカメラの市場に打撃を与えたりするのです。彼らのように既存市場の収益構造を根本から変える企業をディスラプターと言います。
レガシー企業がディスラプトを避けるためには、ディスラプターよりも先に新たな市場を作り出すことが命題となります。
右下は、生産性が高いレガシー企業がいるエリアで、各業界や市場をリードする大手企業が多く存在しています。彼らは大手で資本力はあります。ただし、市場そのものは成長性が鈍っていますので、事業領域や事業を取り巻く環境は多くのレガシー企業がいる左下と同じです。
また、彼らも最初から右下に登場したのではなく、その他多くのレガシー企業と同じように左下で事業をスタートしました。花札メーカーからゲーム会社になった任天堂や、織り機メーカーから自動車メーカーになったトヨタ自動車がをイメージすると分かりやすいと思います。
その時々の新しいテクノロジーを導入したり、時代に合うビジネスモデルを取り入れたりすることで、安定的、かつ効率的に収益を確保できるようになり、左下から右下へ移動したわけです。
彼らは、新たな市場を作るイノベーションのタネを探しながら、右上にいく方法を模索しています。例えば、任天堂がVR技術でPokemon GOを生み出したり、トヨタ自動車がエコカー技術で次世代自動車という市場を作り出してりするようなケースです。
左下にいるレガシー企業としては、彼ら大手企業もライバルです。彼らと有利に競争するためには、大手と同じくらい生産性を高める必要があり、同時に、大手より先に新たな市場を作り出すイノベーションのタネを見つける必要があります。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授