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» 2020年07月02日 07時03分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:組織は「言葉」から変わる (1/2)

今こそ、悪しき日本型雇用システムを見直すきっかけに。

[黒田天兵,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、企業では従業員のエンゲージメント(=貢献意欲)が低下してしまい、危機的状況である、という趣旨のネットニュース記事が増え、関連するオンラインセミナーも多く開催されるようになった。しかし、実際のところはどうなのだろうか。本当にエンゲージメントはそこまで低下しているのだろうか。それによって危機的状況がもたらされているのだろうか。

 多くの企業が危機的状況にあるというのは間違いないだろう。売上が急激に下がってしまい、事業の再編が急務という話も多い。しかし、エンゲージメントサーベイ(=エンゲージメント調査ツール)を導入している企業にヒアリングをかけてみると「実は、売上は下がっているのだが、一時的にエンゲージメントは上がっている」という組織が案外多いという事実もある。この状況下で、従業員の心の機微は揺れている。それを正しく捉えて、次なる打ち手を講じていく必要がある。本稿ではインナーブランディングという観点からメッセージの発信側はどのようなメッセージを発し、どう伝えていくべきなのかということを記したい。

そもそもBeforeコロナはどのような状況だったのか

 もともと日本で働く従業員の状態はどのようなものであったのかに、まず着目してほしい。次のようなデータがある。2017年に発表された米ギャラップのエンゲージメント調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかおらず、調査した139カ国中132位と最下位クラスであった。

 また、2019年にリリースされたエン・ジャパンの「社内失業」についてのアンケート調査によれば、日本は社内失業者が予備軍を含めるとなんと23%にものぼるというデータもある。一方、パートタイム労働者を除く一般労働者の労働時間は、日本は20年近く2000時間以上と長時間労働はなかなか改善されていない……。

 このような状況を日本経済団体連合会(経団連)も課題と認識しており、今年1月に公表された「2020年版経営労働政策特別委員会報告」では、従業員のエンゲージメント向上を特に強調し、働き手の多様性や主体性を尊重した自律的なキャリア形成の支援とデジタル革新を担う人材の能力開発の必要性等を記述している。

課題の根底にあるものは何か

 新型コロナウイルスの影響によってエンゲージメントが下がったのではない。日本の企業で働く従業員の多くは、もともと低かったのだ。ここを捉え間違えてはならない。経団連の報告にも記載があるのだが、背景にあるのは新卒一括採用や長期・終身雇用、年功型賃金などを特徴とする「日本型雇用システム」の弊害である。

 長く経済成長を支えてきたシステムではあるが、「新卒一括採用」が【タイプ(1)自主的・自律的に学ばない人】を生み、「長期・終身雇用」が【タイプ(2)コンフォートゾーンに身を隠す人】を生み、「年功型賃金」が【タイプ(3)価値観の凝り固まって変化できない人】を生んできた。

 この3つのタイプの人材は、仕事の進め方や働き方の常識が根底から覆っているこの状況では、はっきり言って不要である。もしこの3タイプに当てはまるような人材が多い企業は、早急に変化をしなくては生き残ることすら難しいだろう。

今、メッセージの発信側が取り組むべきこと

 Withコロナの状況はまだ続く。その中で、まず取り組むべきと考えることは2つある。1つは、判断基準の軸となる「経営の優先順位(=ミッション)を見直し、それを発表すること」である。

 この新型コロナウイルスの影響で、経営の優先順位を見直し、それを企業メッセージとしてメディアや自社のプレスリリースで発表する経営者が増えてきている。その代表格は日本電産会長兼CEOの永守氏重信であろう。永守氏の各メディアでの発言によると、経営の優先順位は、会社の利益より、家族。家族より、個人の人命を優先するとのことである。これに同調するように、同様のメッセージが今、続々と発表されている。

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