企画が通るか通らないかは、企画がいいかどうかということとは、別の問題。企画書は、ラブレター。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
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「企画書を出してるんですけど、なかなか通らないんです」と、経営者に相談されました。確かに、企画は、考えることより、通すことが難しい。企画を通せるのが、リーダーです。「せっかく、いい企画なのに……」と、グチをこぼします。
企画が通るか通らないかは、企画がいいかどうかということとは、別の問題です。企画書は、ラブレターです。ラブレターなら、渡すタイミングが重要です。学校時代のラブレターは、よく放課後の体育倉庫の裏で渡します。
企画書は、プレゼントです。プレゼントは、何を渡すかより、渡し方の方がはるかに大切です。企画書も同じです。「来週までに企画書を出してください」といわれて書いた企画書は、通らないことが多いです。
ラブレターに、「いついつまでに書いてください」という締切はありません。常にポケットに入れて持ち歩き、渡すタイミングを考えます。何をどう書くかよりも、いつ・どのように渡すかがポイントです。
ベストセラー『面接の達人』が生まれたのは、ダイヤモンド社の土江英明さんから1冊目の本の企画書について取材を受けたことがキッカケです。私は「実は、この本は2冊の企画があったうちの1冊なんです」と伝えました。
土江さんがレジで支払いをしながら、「これ、聞き忘れました。もう1冊の企画は何だったんですか」と言いました。私がレジの前で土江さんに「こういう企画があったんです」と話すと、「それ、やらせてください」と言われたのが、『面接の達人』の企画書が渡された瞬間です。レジの前でのプレゼンでした。
PHP研究所の阿達ヒトミさんともたくさん本をつくっています。阿達ヒトミさんは、企画書の渡し方の達人です。帰りのエレベーターの前で「そうそう、そういえば……」と言い始めるところです。机の前ではなく、レジやエレベーターの前など、バタバタしているどさくさ紛れに企画を出すのが一番いいタイミングです。会議室をとってプレゼンの場で落ちついて渡そうとすると、逆に通りにくいです。
「明日までに」と言われたら当日中、「来週までに」と言われたら翌日出すのが、企画書が一番通りやすい形になります。企画書は、相手が身構える前に渡してしまうことが大切なのです。
博報堂の中では誰もが天才・藤井達朗の下につきたいと思っていた時、私は運よく下につけてもらいました。藤井さんに「ちょっとお茶飲もう」といわれて、2人でお茶を飲んだ時に「こんなん考えてくれよ」と、企画を説明されました。
社員食堂の机に置かれていたナプキンの上にボールペン書きでオリエンがあったのです。この企画書はナプキンに書かれたものです。通常の企画書は、きちんとした紙に書くことが多いです。
藤井さんの名作のほとんどは、居酒屋の「おてもと」に書かれたものでした。それを企画書のような形でみんなの中でやりとりします。私はそれ以来、カフェに行くと必ずナプキンを使って考えたり、「おてもと」の袋の小さいスペースに思いの世界を広げたりします。
いまだにその習慣は続いています。きちんとした紙では相手だけでなく、自分がアイデアを考える時も身構えてしまいます。チラシの裏には、いい絵や字が書けるのと同じように、あまり身構えないようにすることが大切です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授