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» 2022年05月16日 07時04分 公開

EV化が生み出すモビリティの多様性(1/2 ページ)

EV化によって、未来のモビリティの可能性が拡張され、これまでの自動車製造における制限が取り払われ、自動車の多様性が生み出されるだろう。

[山本和一,ITmedia]
Roland Berger

EV化で起こる、脱炭素よりも重要な変化

 「カーボンニュートラル」や「脱炭素」は今やどの業界にとっても必須課題だ。パリ協定そしてCOP26を経て、地球温暖化を抑制する目標が定められ、世界が動き出した。

 自動車業界でも、電動化、EV(BEV)化が進んでいる。主要OEMは、既存のガソリン車の置き換えとしてEV投入を加速させている。消費者や投資家からのカーボンニュートラルに向けた視線は日々強くなり、その動きに先んじて手を打つ流れができている。

 しかし、EV化がもたらす変化は、負の側面をゼロに近づける「脱炭素」だけではない。

 筆者は、EV化によって、未来のモビリティの可能性が拡張すると考える。EVでは、これまでの自動車製造における制限が取り払われ、自動車の多様性が生み出されるのだ。

EV化が変える自動車作り

 EV化は、多様なプレイヤーが多様な自動車を生み出す機会になっている。その理由は、自動車製造での自由度が上がることだ。

 EVは従来のガソリン車と2つの点で特徴がある。1つは設計・製造が簡易になることである。つまり、ノウハウの塊りであるエンジンが無くなり、モーターや電池といったコンポーネントの組合せで自動車を作ることができる。2点目はパッケージングの自由度が高まることである。パワートレインのレイアウトに制約が少ないことから、自動車全体の部品のレイアウトや車室空間のつくりに自由度が上がる。

 設計・製造の簡易化とパッケージングの自由度の高まりは、多様な形の自動車を生み出す。つまり、自動車の利用目的に応じた大きさや形、車室空間や荷台の作りが実現される。例えば2人乗りのマイクロEVや、ラストワンマイル物流に使いやすいバンなどである。また、既存自動車メーカーとは異なる新興EVメーカーの出現が進む。ユーザーのニーズに応える事業アイディアや車両アイディアを持った新興プレイヤーが、この自動車市場に参入する機会が増える。

EVが後押しする多様化

EV化が生み出す「3つの多様性」

 EV化によって、モビリティにおけるさまざまな側面で多様化が進む。これはつまり、人々の「移動」や社会における自動車の在り方そのものが、変化していくということを意味する。具体的な変化を、ハードウェア、エンドユーザー、プレイヤーの3つの視点で考察したい。

(1)ハードウェアの視点:四輪のサイズ・カバレッジの多様性

 まず、多様なモビリティを「大きさ」の観点で捉えたい。これまでは、自動車(四輪車)の大きさに対して、より小さなサイズをバイクや自転車といった二輪車がカバーしていた。EVの出現は、従来の四輪ガソリン車を置き換えるだけでなく、小回りの利く手軽な大きさで、かつ四輪だからこその安定感を両立する、新たなモビリティを生み出している。

自動車のカバー範囲拡大

 具体的には、主要自動車メーカーは、従来のガソリン車を代替する同じサイズのEVモデルを多数発表している。加えて、世界各地では既に小回りの利くマイクロEVが姿を見せており、都市部の狭い道路で、気軽にシェアリングで利用することが想定されている。例えば、ドイツのACM、ポーランドのTriggo、イスラエルのCity Transformerなどが挙げられる。

 さらに、販売価格が50万円程度の超低価格EVも出現している。この価格帯であれば新興国の市場の裾野が広がり、かつガソリンスタンドといったインフラの整備なく、ガソリン車をスキップしてEV普及が進められる。例えば、GMとSAICの合弁会社である上汽通用五菱汽車(ウーリン)が超低価格マイクロEVを投入している。

(2)エンドユーザーの観点:生活・移動シーンにおける選択肢の多様性

 人々は生活の中で、多種多様な移動をする。その時々で最適な移動手段(モビリティ)を選択しているが、多様なEVや多様なプレイヤーが出現することで、その選択肢はさらに広がっていくだろう。

 例えば、仕事で都市部をバス移動していた人は、マイクロEVシェアリングを活用するかもしれない。また、郊外の住宅地で自動車を2台持っていた家族は、うち1台を買い物用のマイクロEVに置き換え、買い物へは不安定な自転車ではなく安定感あるマイクロEVで出掛けるかもしれない。

 つまりは、エンドユーザーにとって、多様な移動手段が出現しているということだ。となると、これからは「自動車市場」という観点だけでは市場を見誤る。「移動総量」を市場の全体像として捉え、多様なモビリティ(自動車、電車、バス、eスクーター、自転車、徒歩、等)がその移動総量を取り合う。エンドユーザー目線で言うとシーンに応じてモビリティを使い分ける、と捉えることが必要である。

生活・移動シーンにおけるモビリティの使い分け

 具体的には、前述のマイクロEVのACMやCity Transformerなどが好例であろう。これまでになかった四輪サイズのモビリティで、都市部における人々の移動シーンの変革を実現し得るモビリティといえる。

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