エグゼクティブこそ、確固たる「自己ブランディング」が必要な時代ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

人生100年時代となった今、エグゼクティブのキャリアに対する考え方についても、大きく意識改革をする必要に迫られている。後半における前向きなキャリア構築のためにもっとも重要なこととは一体なんだろうか?

» 2022年05月26日 07時04分 公開
[松本淳ITmedia]

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 人生100年時代となった今、エグゼクティブのキャリアに対する考え方についても、大きく意識改革をする必要に迫られています。

 長く生きることは、「長く働く」ことに直結します。それは、これまで当たり前とされていたキャリアの「成功パターン」が、もはや通用しなくなることを意味します。

 人生のステージは、「教育を受ける期間」「仕事をする期間」「引退した後の期間」に分けられます。これまでの常識では、20代までの教育期間の後に40年ほど働き続け、その後、60代で定年を迎えた後は完全にリタイアしてしまうというものでした。

 しかし人生100年とした場合、60代での完全引退は早すぎるということになるでしょう。そしてそれは、生活資金を確保するという意味合いだけではなく、「価値」を生み続けることによって健全な自己肯定感を維持するという、人生におけるとても重要な意味も含みます。

「会社・肩書」だけのブランドは通用しなくなる

 しかし今、仕事人生の前半で成功を収め、エグゼクティブとして会社一筋で活躍してきたような人ほど、キャリアの後半で路頭に迷う事例が急増しています。リストラや早期退職がもはや当たり前のことになったこの時代、「会社・肩書」というブランドが急速に力を失いつつあるからです。

 会社での肩書をそのままセルフブランディングとして使ってきた人は、その後に訪れる「キャリアのギャップ」に向き合うことが難しい場合があります。早期退職後、これまでの肩書の力だけでは転職や再就職がうまくいかず、会社ブランドを失った後の自分のありのままの姿に初めて気付くことになるのです。

 退職後もさらに仕事人生が長く続くことを思えば、これは人生の中での大きな危機だといえます。自分を支えてきた「会社ブランド」は思っていたよりも早く手放さなければならないのに、その後も、(思っていたよりも)長く働き続けなければならない。自分の納得のいかない環境で不本意な仕事を続けることは、自己肯定感の喪失をもたらします。

 では、人生の後半における前向きなキャリア構築のためにもっとも重要なこととは一体なんでしょうか?

 それは、会社や肩書を越えた「社会の中における自分ブランド」を、できるだけ早い段階で構築しておくことです。そしてその実現のために、今の組織にとらわれない独自の自己ブランディング戦略を考え、実行していくことが重要です。

組織ではなく、「社会」に属するということ

 長期的な視点でのキャリア構築、特にシニア期における継続的なキャリアアップを達成するためには、「どこの組織に属している」ということよりも、「社会に属している」という考え方が重要です。

 それは言い換えれば、自分を基点とする「社会的ネットワーク」を築くことだともいえるでしょう。このネットワークこそが、自分にとって本当に必要な情報、そして新しいチャンスをもたらしてくれるのです。

 ともすれば、人はひとつの組織に属することに安住してしまいがちです。その結果、会う人も、入って来る情報も、その組織の「閉じた世界」に終始してしまいます。次のキャリアステップを考えたときに初めて、自分には情報もチャンスもないという状況に気付くのです。

 そして、退職後は組織のブランドも使えなくなり「ただの人」になってしまう。組織に依存しすぎたために、個人としての可能性を育ててこなかったということです。こうなると、組織から離れた瞬間に、まったくの徒手空拳で社会と対峙しなければならない、ということになってしまいます。

SNSを活用し、「社会との関係性」を再構築する

 SNSというサービスが世の中に本格普及を始めてから、もう10数年以上が経過しました。人によって使う目的はさまざまですが、特に国内では趣味やプライベートのための利用が多い状況です。

 もちろん、SNSをプライベートの充実のために使うことも意義のあることだと思います。しかしながら、これまでに述べてきた「自分だけのキャリア」を考えた場合、SNSは、自己ブランディング構築のために極めて強力なツールとなり得るのです。

 SNSは、個人と個人の「つながり」をベースにしたプラットフォームです。1対1でのつながりを基点とし、その無数の集合が巨大なネットワークを構築しています。そういう意味では、ネット上に構築された「社会の縮図」だともいえるでしょう。そしてこの、「社会」に積極的に参加することが、自分の新たな可能性を切り開くことになるのです。

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