「はかどっていてもそうでなくても、15分で終わり、そこからまた別の作業をする」ルールを決めれば、作業の集中を妨げるマインドワンダリングは防ぐことができるという。
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「打ち合わせのときに、当然知っているはずの用語やエピソードが出てこなかったり、大切なポイントがうっかり抜け落ちてやり直しになったり……。なんて記憶力が悪いんだろうと、頭を抱えることがよくあります」
これは、30代男性から聞いた悩みです。同じような経験をした方も多いでしょう。しかしこれ、「記憶力」の問題ではありません。
大切なのは、「必要なタイミング」で「必要なこと」を思い出すこと。これが「要領のよさ」につながります。
そのためには、脳の容量を空けておかなければなりません。そこには、脳の記憶機能の1つ「ワーキングメモリ」が深くかかわっています。
ワーキングメモリは作業記憶とも呼ばれ、
(1)作業をスムーズに行うために、必要な情報を一時的に脳にストックしておく
(2)必要になったタイミングでその情報を呼び出す
という2つの能力が備わっています。
さらにこのワーキングメモリの優れているところは、(1)で情報を脳にストックしておくときに、いくつかの関連する情報を1つの「かたまり」として覚えられる点です。この「ひとかたまりになった情報」をチャンクと呼びます。
例えば、プレゼンテーションで「売上データ」「競合の動向」「市場の変遷」「今後の予測」という4つについて話すときも、「別々のことを4つ覚える」のではなく、「プレゼンという1つのチャンクに統合する」ことで、記憶に定着しやすくなります。
ただ残念なことに、「ワーキングメモリ」が一度に記憶しておける記憶容量(=チャンクの数)は、4つしかありません。しかも、この数を増やすことは脳の構造上、不可能。つまり、やるべきことが5つ以上あると、それだけで容量がいっぱいに。
そこで、5つ以上の作業がある場合は、それぞれの作業時間を15分以内で区切る「15分サーキット」の理論を使いましょう(なぜ15分以内なのかは後ほど説明します)。
例えば、「プレゼン資料の作成(A)」「会議資料の作成(B)」「売上データ入力(C)」「注文書の作成(D)」「経費精算(E)」という異なる5つの作業があったとします。
このとき1作業を15分ごとに区切りながら行い、5つ目を15分やったら1つ目に戻ります。つまり、次のように1つの作業を2回ずつ(2周)行うのです。
A―1:プレゼン資料のアウトラインを決める
B―1:会議資料のタイトルとリード文、項目をつくる
C―1:売上データの入力をする
D―1:注文書に入力する内容をメールから探す
E―1:領収書を整理する
A―2:プレゼン資料に入れる詳細データを探して貼りつける
B―2:会議資料の項目に入れる図表を探して貼りつける
C―2:売上データの入力を終える
D―2:注文書のフォーマットに入力する
E―2:会計ソフトに経費を入力する
このように、AからEまでの作業を順番に回していきます。たったそれだけで、次のようにさまざまなメリットがあります。
・15分たったらなにをやるのかが決まっているので、1つの作業に集中でき、やるべきことを忘れずにすむ
・「どの作業にどのくらいの負荷がかかるのか」が分かるので、時間配分の能力が上がる
・A とB のように似通った作業が発生すると、「さっき使った資料が参考になるな」というように、作業のコツがほかの作業に応用できることに気付ける
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授