「本当の休みをとる」とはどういうことなのか。疲れているのに、上手に休めない。その理由は何だろうか。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
今、多くの人が、気付かぬうちに疲れやストレスを抱えています。
科学技術の高度化により、私たちは便利で快適な生活を手に入れやすくなりました。ほとんどの人がスマートフォンやタブレットなどを手にし、ネットで手軽に有益な情報や娯楽を得ることができます。
それでも、心と身体のバランスを崩してしまう人は後を絶ちません。精神を患う人、睡眠に問題を抱える人、メンタルヘルスの不調による休職者は増加し続けています。
コミュニケーションがますます複雑化した結果、情報が多すぎて処理しきれなくなり、何を信じ、何を頼りにして生きればいいのか分かりにくくなっているのかもしれません。
家に帰ってきても、心配事がなくなることはなく、知らず知らずのうちに心身が疲弊してしまっている人、限界までストレスをためてしまっている人、心の傷を負ってしまっている人が少なくないのです。
そして、「いくら休んでも、疲れがとれない」「そもそも、十分に休むことができない」「休むのが苦手」と感じている人もたくさんいます。
おそらく、みなさんの中にも、
という人がいるのではないでしょうか。
私のクリニックにも、日々の仕事や生活の中で、傷つき、処理しきれないほどのストレスを抱え、しかし十分に休むことができず、心身が耐えきれなくなってしまった人がしばしば来ます。
では、耐えきれなくなると、どうなるのか。
多くの場合、まず身体がいうことをきかなくなります。頭では「自分は大丈夫」「働きたい」「人に会いたい」と考えているのに、朝、どうしても起きられなかったり、通勤途中もしくは帰宅途中に、動どう悸き や吐き気を催したり、理由もなく涙が出てきて止まらなくなったり……といったことが起こってしまうのです。
その結果、休職を余儀なくされる人、何らかの治療が必要になる人もいます。
もちろん、ストレス源となっている仕事や難しい人間関係から離れたり、適切な治療を受けたりすることで、多くの人は回復し、再び社会の中で生きていく力を取り戻すのですが、心身の状態が悪化する前に、うまく休めて回復できるのであれば、それに越したことはありません。
しかし、休みの日にひたすら眠ったり、ダラダラ過ごしたりすることで、心身の状態が改善するとは限りません。
実は、それぞれの人の個性や、その時々の心身の状態などによって、「本当の意味で心や身体を癒やすことができる休み方」は異なるのです。
私は研修医時代、尊敬する先輩医師から「ぼくらの仕事は安定したパフォーマンスを何十年も維持する必要があるから、プロとして休む技術が必要なんだよ」と教えられました。
それはまさに真実であり、ありがたい教えだったと思っていますが、私自身も、決して休むのが上手だとはいえませんでした。
そもそも「休む」とは何でしょうか。
日本語ではabsent(欠席・欠勤する)と、rest(休憩・休養する)は同じ「休む」という言葉を使うため勘違いされますが、仕事や学業に勤しんでいない時間を過ごしているからといって、うまく休めているとは限りません。
休養とは、「疲労を回復し、健康を取り戻す」という目的のために、一定の時間を使って行われる行為のことです。ゲームでは、宿屋に泊まって休めば体力は一瞬で全回復しますが、現実はそう簡単にはいきません。
では、なぜ「休みたくても休めない」「休みをとっても、心や身体が休まらない」「休んでいるつもりなのに、心身の疲れが取れない」といった状態が起こるのか。
その根本的な原因は、「休むこと」が、いかに難しさを伴う高等技術であるかが理解されていないことにあると私は思います。
人がうまく「休む」ためには、大きく3つのプロセスがあると考えています。
(1)休みが必要な状態だと自覚すること
(2)休むことができる環境を確保すること
(3)自分の状態にとって適切な休養活動を選択すること
「きちんと休む」「自分に合った本当の休みをとる」というのは、これらのプロセスをすべて成立させないといけない「総合芸術」のようなものだと考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授