官民連携でサイバー防衛強化へ 12月に業界5社が新団体設立

サイバー防衛分野での人材育成団体は前例がない。防衛省や自衛隊、総務省などの事務次官経験者ら5人が働きかけていた。産業界の人材を結集し、政府と連携してサイバー防衛能力の強化を進める。

» 2023年11月24日 08時45分 公開
[産経新聞]
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 サイバー防衛人材の育成を官民連携で強化するため、NTTなど大手通信事業者5社が新たに民間団体を設立することが22日、分かった。12月1日に設立される。サイバー防衛分野での人材育成団体は前例がない。防衛省や自衛隊、総務省などの事務次官経験者ら5人が働きかけていた。産業界の人材を結集し、政府と連携してサイバー防衛能力の強化を進める。

 設立するのは一般社団法人「サイバー安全保障人材基盤協会」。理事長には情報通信に詳しい林紘一郎・情報セキュリティ大学院大元学長が就く。専門人材を育成する「サイバー教育部」が年度末に新設される陸上自衛隊教育施設など研究機関が集積する神奈川県横須賀市に拠点を置く。

 設立主体となる民間企業はNTT、NEC、東芝、日立製作所、野村総合研究所(NRI)グループのNRIセキュアテクノロジーズの計5社。他にも複数事業者が参加を検討している。

 同協会は、サイバー攻撃への対処に必要なスキルを調査し、統一的な育成カリキュラムの要素を整理。認証制度の創設や海外制度との連携を検討するほか、民間登用を行いやすくするため人材バンクとしての機能も視野に入れる。政府機関や重要インフラ、防衛産業との情報共有も図る。

 新団体設立は8月、自衛隊制服組トップの統合幕僚長を務めた斎藤隆氏のほか、鈴木茂樹元総務次官▽安藤久佳元経産次官▽島田和久元防衛次官▽中村格前警察庁長官−の計5人が提言した。産業界では、他国からの重要インフラなどへのサイバー攻撃に対する意識は低いと指摘し、官民一体での高度な人材育成を求めた。

 政府は昨年末に改定した国家安全保障戦略で、サイバー防衛能力を「欧米主要国と同等以上に向上させる」と明記。今後5年間で約900人の自衛隊のサイバー部隊を約4千人に、従事する要員全体で計約2万人に拡充する。攻撃を未然に防ぐため相手システムへ侵入する「能動的サイバー防御」の導入も進める。

 政府は来年の通常国会に向けて関連法整備を見込んでおり、同協会が人材育成基盤を担うことで政府の体制づくりを後押しする狙いがある。

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