石炭からLNGへ、企業の燃料転換を加速 大ガス社長インタビュー

大阪ガスは、企業が工場の燃料として使用している石炭や石油を、二酸化炭素の排出がより少ない液化天然ガスに転換するため、設備の更新を手がける取り組みを加速させる。

» 2023年12月12日 08時06分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 大阪ガスは、企業が工場の燃料として使用している石炭や石油を、二酸化炭素(CO2)の排出がより少ない液化天然ガス(LNG)に転換するため、設備の更新を手がける取り組みを加速させる。藤原正隆社長が産経新聞のインタビューに応じ、語った。脱炭素などの技術や経験のある人材を維持するため、社員の定年を60歳から65歳まで段階的に引き上げることも明らかにした。

インタビューに答える大阪ガスの藤原正隆社長=6日午後、大阪市中央区・大阪ガス本社(柿平博文撮影)

 同じ熱量を得るために排出されるCO2の量はLNGで石炭の約半分。燃やしてもCO2が出ない水素が普及するまでのCO2削減策として転換を推進する。藤原氏は「水素が大量に安く手に入る時期まで、まずLNGでCO2を減らすのが現実的」と述べた。

 企業の環境意識が高まるとともに、設備が老朽化して更新時期を迎える工場が増えており、燃料転換を呼びかけていく。

 石炭は埋蔵量が豊富で価格も安いが、熱量や発電量当たりのCO2排出量が石油やLNGより多い。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)でも、石炭をはじめ化石燃料の使用削減が議論となった。

 大阪ガスは、すでに旭化成の延岡地区(宮崎県延岡市)の火力発電所で、平成30年12月に九州電力など5社で合弁会社を設立し、LNG基地や導管などのインフラを整備。東洋紡の岩国事業所(山口県岩国市)でも今年10月、発電所の燃料転換工事が完了した。延岡で年約16万トン、岩国では年約8万トンのCO2削減を見込む。海外でも、タイやベトナムで工場の燃料転換を推進している。

 石炭だけではなく、大王製紙三島工場(愛媛県四国中央市)では令和3年10月までに、生産設備で使っていた重油を一部、LNGに転換。年約2万2千トンのCO2削減につながるという。

 大阪ガスには昭和50年〜平成2年に約16年かけて都市ガスの原料を石油・石炭からLNGに転換した経験があり、そこで蓄積したノウハウも生かしたい考えだ。

 一方、社員の定年を令和7年度から15年度にかけ、現在の60歳から段階的に65歳まで引き上げることで組合側と合意した。藤原氏は「人件費は増加するが、技術力のある人材を確保して会社としての実力を高めることが必要」と話した。

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