民泊やカーシェアなど、モノやスペース、資産を個人間で共同利用、共有するサービス「シェアリングエコノミー」。地方では、「人口減や高齢化といった社会的課題の解決に役立つのでは」と注目されている。
民泊やカーシェアなど、モノやスペース、資産を個人間で共同利用、共有する「シェアリングエコノミー」。地方では、「人口減や高齢化といった社会的課題の解決に役立つのでは」と注目されている。四国でも、徳島県美馬市で「とくしまシェアリングカンファレンス」、香川県琴平町で「四国シェアサミット」が相次いで開催。1人の人材が複数のエリアで役割を担って活躍してもらい、関係人口として2人以上の価値を生み出す「スキルのシェアリング」が、地方創生の切り札の一つとして注目を集めている。
琴平町で2日間開催された四国シェアサミットは、一般社団法人シェアリングエコノミー協会と地元有志団体による実行委員会が主催。「地方が主役、個人が主役」「公助から共助へ」をキーワードに、町内2会場で7つのトークセッションが行われた。
「移動」「働き方」「旅」「アート」「教育」などと「シェア」を掛け合わせたテーマのトークセッションに延べ約30人が登壇し、全国から200人以上が参加。空き家やシェアハウスなどを活用した住まいのサブスクリプション(サブスク、定額利用)サービス▽空き部屋を旅行者に貸し出す宿泊場所のシェア▽現代アート作品のサブスク▽キャンピングカーのレンタルやカーシェア−などの運営者のほか、ワーケーション協会、デジタルノマドといったさまざまなジャンルでシェアリングエコノミーを体現する人たちが議論した。
地方におけるシェアエコノミーについて、パソナJOB HUBの加藤遼ソーシャルイノベーション部長が「地域と都市、生産者と消費者、人と自然といったつながりをつくれる。顔が見える関係性のような信頼関係が基盤にあって成り立ち、社会の問題点を解決すると信じている」と訴えた。
住まいのサブスク事業を展開するADDressの佐別当隆志代表取締役は「リモート・テレワークが拡大し、どこででも働けるのであれば生活コストの安い地方に住むのが絶対に得」と強調。Airbnb Japanの谷口紀泰事業開発部長は「実行を担う人の不足が地方の一番の課題。関係人口による新しいコミュニティーづくりが解決策になるのでは」と話した。
同サミットの実行委によると、政府や自治体の財政事情や高齢化、社会保障費の急増などにより、従来の「公助(公的支援)」が維持されにくくなる状況の中、地域コミュニティーや民間の役割が増し、「共助」の重要性が高まっているという。
シェアリングエコノミーには、人や地域が持つリソース(資源・資産)を共有して開放することで新しい価値を創出するほか、地域住民の連携を強めたり、観光客や新しい居住者をひきつけたりすることが期待されている。さらに、新しいビジネスモデルや雇用の創出など地域経済活性化にもつながり、地域力の向上をのぞむことができる。
シェアリングエコノミー協会によると、令和4年度のシェアによる市場規模は2兆6158億円。14年度の既存産業への経済波及効果は約10兆円にのぼると予測している。
「しょうゆの貸し借り、テレビを複数世帯で一緒に見るなど、シェアリングは昔の隣近所の社会にもともとあった概念で、日本人には受け入れやすいはず」
こう話すのは同協会の香西志帆四国支部長だ。地方の人口は減少の一途をたどるが、「マンパワー、関係人口は都会にいながらでも地方に関わっていける。地方では個人の裁量で判断して実行でき、さまざまな役割を担い自分が主役になれるチャンスが都会より多いはず」と指摘。「地域に貢献することにやりがいを見いだし、地域の課題解決のための生き方が増えてくるのでは」と期待する。
同支部では個人の働き方やスキルアップに関するイベントや交流会を開催。香西支部長は「さまざまな人がさまざまな地域に関わり、共存と共助で地域を地元住民と一緒になって支えていく考えをみなさんに理解していただければ」と訴えている。(和田基宏)
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