NTT・島田明社長 海外展開、iモードの二の舞は「仲間作り」で回避

米国の巨大IT企業は「パートナー」だと指摘するとともに、ケタ違いの研究開発費を計上する巨大ITとも「戦える」と断言。

» 2024年01月15日 09時26分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 NTTの島田明社長(66)は産経新聞の取材に応じた。米国の巨大IT企業は「パートナー」だと指摘するとともに、ケタ違いの研究開発費を計上する巨大ITとも「戦える」と断言。国内では成功したが海外展開がうまくいかなかったNTTドコモのインターネット接続サービス「iモード」と、光技術を使った次世代通信構想「IOWN(アイオン)」の違いを問われ、「仲間作り」を進めていることや多様性に富む研究体制を挙げた。

インタビューに応じるNTTの島田明社長=12日午前、東京都千代田区(関勝行撮影)

――自民党のプロジェクトチームが昨年、NTT法の廃止を提言した

 「非常にいい提言をいただいた。(同法で提供義務が定められている)固定電話事業は赤字が膨らんでいる。電話の機能はブロードバンド(高速インターネット)に組み込み、それを国民が安く享受するためにはどうすればいいかを議論することが望ましい」

――国際競争力の向上には何が必要か

 「光電融合デバイス(NTTが開発している、半導体の信号処理を電気ではなく光で行う装置)の普及が鍵だ。そのためには他の事業者と協力しなければならず、(NTT法で規定されている)研究開発成果の開示義務を見直してほしいと申し上げてきた。今議論が動きつつあるのは非常にありがたい」

――国際競争力を向上させた先では、米国の巨大ITなどと競争できるのか

 「巨大ITにはわれわれのデータセンターを使ってもらうなどしており、パートナーだと思っている。ただ、巨大ITは研究開発費が多いので戦えるわけがない、というのも違う。たくさんお金をかければ飛躍的なテクノロジーが生まれるというわけではなく、結局は研究者の能力次第だ」

――IOWNの世界的な展開を目指しているが、iモードはかつて海外展開に失敗した

 「当時は仲間作りが下手で、例えば欧州では現地のスキームにうまく入れなかった。今回はIOWNに賛同してくれる仲間作りから始め、協力して開発を進めている。研究所にも色々な国の人が入っており、日本人だけで進めているというようなイメージではない」

――生成AIの基盤となる大規模言語モデル「tsuzumi(ツヅミ)」の商用提供が3月から始まる

 「既に百数十社から引き合いをいただいている。軽量(低コスト)なモデルで企業ごとのチューニングも安く行えるため、使いたいと思ってもらえているのだろう。今後はもう少し規模の大きなモデルを出そうと検討している」(根本和哉)


しまだ・あきら 一橋大商卒。昭和56年、日本電信電話公社(現NTT)入社。NTT東日本取締役、NTT取締役、常務、副社長などを経て、令和4年6月から現職。東京都出身。66歳。

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