数値化仕事術の背景にあるツボとその活用について知って、ビジネスで本当に使える数値化仕事術を理解してほしい。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
私がソフトバンクで孫社長から直伝された「数値化仕事術」を本にまとめたのは2017年のことでした。この「数値化」で急速に事業拡大・利益拡大を目指すというアプローチは、この7年程度で飛躍的に広がりもはや常識になった感さえあります。
その背景には、Webマーケティングツールやセールスオートメーションに代表されるようなITを活用したさまざまなツールの普及があると思われます。
しかし、その一方でさまざまなツールから出てくる数字や代理店から提供される数字を見るだけで、本当に効果的に数字を企業の意思決定に合理的に活用できているのかは、疑問に思うことも多々あります。むしろ数字に振り回されて間違った意思決定をしている場合も見てきました。
例えば、SNSのフォロワー数は必ずしもその広告価値に直結しているわけではありません。フォロワーがアクティブかどうかは分からないからです。このよう数字をマーケティング用語では、ヴァニティ・メトリックス(虚飾の数字)と呼ぶようですが、私はこのような事態を「数字の洪水で溺れている」と勝手に表現しています。
また、逆にツール化されていない業務については、数値化もできておらずひたすら前例を踏襲している場合もあります。例えば、私が代表を務めるトライズが市場としている英語研修の分野などはそのような事例です。このような事態を私は「数字不足で思考停止」と呼んでいます。
今回は、このような数値化仕事術の背景にあるツボとその活用について説明します。これを通じて、ビジネスで本当に使える数値化仕事術を理解してもらいたいと思っています。
さて、まず「数値化」をする際には最も大事なキモの一つは「ミラーのマジカルナンバー7±2」です。この「ミラーのマジカルナンバー7±2」というのは、アメリカの心理学者ジョージ・ミラーによって提唱された、人間の短期記憶の容量に関する概念です。
この理論によれば、一度に記憶できる情報の数は約7個±2個であるとされています。つまり、平均的な人は5から9個までしか同時に保持することができないのです。
例えば、携帯電話の番号ですが、最初の080や090のあとの、8桁を覚えることは容易ではないでしょう。また、虹がそもそも光の周波数のグラデーションでしかないのに7色と表現されているのは、それ以上の色を人間が認知・記憶することができないからです。こうしたことは全てこの容量制限に起因しています。
この「ミラーのマジカルナンバー7±2」理論は、ユーザーインターフェースのデザインや第二言語習得など認知心理学のさまざまな適用領域で応用されています。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授